キューピッド・ゴブリン −2−

 

 

学校から帰ってパソコンを立ち上げてメールをチェックすると、

大山からメールが来ていた。

メールの内容は今朝アイツが言っていたオンラインゲームの

公式サイトのアドレスだった。

 

早っ!

 

まったく、こいつは・・・日直はサボるクセにこーゆー遊びの事となると

マメだな・・・。

 

そんな事を思いながらとりあえずメールに書いてある通り、

公式サイトにアクセスしてゲームのクライアントをダウンロードした。

 

ダウンロードとインストールをしている間に夕飯を済ませ、

風呂から上がった後、ゲームを起動すると

大山から携帯に電話がかかってきた。

 

「おいっすー。」

 

『おいっす。メール見た?』

 

「おぅ、見た見た。今、インストールも終わってキャラ作ってるトコ。」

 

『お、ちょうどよかった。お前どんなキャラにする?』

 

「んー、俺はとりあえず戦士にしようかと・・・。」

 

『あー、じゃ、かぶらなくて済んだな。』

 

「お前、何にするんだ?」

 

『俺は盗賊にしようかと。』

 

「へぇー。」

 

『名前は何にする?』

 

「んー、考え中。」

 

『俺は“Hyde”にした。』

 

「ほー、まぁ、何が元ネタがすぐわかるけど。」

 

多分、コイツの好きなバンドのヴォーカルの名前。

 

『ははは、やっぱり?』

 

「うん、わかり易過ぎー。」

 

『まぁ、お前も決まったら早く入って来いよ。待ってるから。』

 

「あぁ、わかった。ゲームに入ったら知らせるよ。」

とりあえず電話を切り、再び名前を考える事にした。

 

さて・・・どんな名前にしよう?

 

俺は大山みたいにキャラ名にしたい程、

ものすごく好きなバンドがいるワケでもない。

 

まあ、テキトーでいいか・・・。

 

とりあえず、キャラ名を入力して種族や職業、フェイスタイプ、

髪型や髪色なんかを選んでゲームに入った。

サーバーと最初に始める町は大山からのメールですでに決めてあった。

 

 

ゲームに入ると目の前に“Hyde”というキャラがいた。

大山だ。

俺はさっそくHydeに向かってエモーションで手を振り、

チャットの耳打ちで話しかけた。

 

[耳打ち] Orli >> おいっすー、お待たせ

[耳打ち] Hyde >> おー、来たか。つーか、その名前どっから取ったんだ?

[耳打ち] Orli >> 最近カッコいいなと思ってる俳優の愛称にしてみた

[耳打ち] Hyde >> へー

[耳打ち] Orli >> ところで最初何からやる?

[耳打ち] Hyde >> んー、とりあえずパーティ組んで町の中を探索してみようぜ

[耳打ち] Orli >> ok

 

俺と大山はパーティを組んでまずは町の中をいろいろ回ってみることにした。

NPCに話しかけてクエストを受け、それをクリアすると報酬で武器や防具が貰えたり、

お金が貰えたり、経験値が入ったりする。

 

 

[Party] Hyde >> そろそろ外に行ってみる?

[Party] Orli >> そうだな、行って見るか

 

そしていくつかクエストをクリアした頃、町の外に出て

モンスターと戦闘をしてみる事にした。

 

[Party] Hyde >> ヒーラーいないけど平気だよな?

[Party] Orli >> そんなに無茶なレベルの敵に突っ込んでいかなきゃ大丈夫だろ

[Party] Hyde >> おっし! んじゃ、まずはその辺のからぶっ叩いてみっか

[Party] Orli >> ok

 

俺と大山は町から出たところにいる一番レベルの低いモンスターに殴りかかった。

すると、二人掛かりの戦闘はさすがにあっという間に終わった。

 

[Party] Hyde >> あ、弱ぇ

[Party] Orli >> 元々ソロで倒すのに丁度いい敵だしなー

[Party] Hyde >> もっと強い敵いねぇかな?

[Party] Orli >> ソロパーティーやるか?

[Party] Hyde >> それだと経験値はどうなるのかな?

[Party] Orli >> さっきwikiでちらっと見たけどお互い離れたトコで狩ってれば問題ないっぽい

[Party] Hyde >> ふーん まぁ、やってみるか

 

俺と大山はお互い少し離れた所でそれぞれモンスターを狩り始めた。

そして、HPが減ってきたら座ってヒーリング・・・回復したらまた狩り始める。

それを繰り返してレベルも順調に上がっていった。

お互いのレベルも7になり、町からもかなり離れた所まで来た。

 

[Party] Hyde >> あそこにいるゴブリン強そう

[Party] Orli >> 赤い名前のかー

 

このゲームの中のモンスターは自分のレベルに丁度いいモンスターは黄色、

ちょっと強そうなのはオレンジ、かなり強そうなのは赤で表示されている。

 

[Party] Hyde >> 無理かな?

[Party] Orli >> んー どうだろ?

 

そんな会話をしながら俺達が迷っていると背後から別のゴブリンに見つかった。

 

[Party] Hyde >> げ からまれた

[Party] Orli >> しゃーない やるか

 

俺と大山は抜刀し、殴りかかってきたゴブリンに切りかかった。

 

[Party] Orli >> つーか、コイツも赤ネームだ

[Party] Hyde >> さすがに強いなー

 

俺と大山の二人掛かりでもなかなかHPが減っていかない。

というより、むしろこっちのHPの方が削られまくっている。

 

[Party] Hyde >> ヤバくね?

[Party] Orli >> 非常に

 

そして、俺も大山も後2,3発喰らうと全滅・・・というその時、

俺のHPが全快し、次に大山のHPも全快した。

 

[Party] Hyde >> あれ?

[Party] Orli >> お?

 

俺達が不思議に思っていると今度は防御力アップと攻撃力アップの魔法がかけられた。

 

[Party] Hyde >> おぉ?

[Party] Orli >> 助かった

 

俺は画面を左右にスクロールして周りを見回した。

すると、俺達の少し離れた所に魔道士の格好をした女の子のキャラがいた。

長いストレートの銀髪の可愛らしいフェイスタイプの子で

見るからにレベルが高そうな武器を持ち、ローブを着ていた。

 

その子はエモーションで俺達を応援しながら無事にゴブリンを倒したのを見届けると

再び俺と大山のHPを全快まで回復してくれた。

 

Hyde >> ありがとう

Orli >> ありがとう

Reia >> いえいえ(´∀`)

 

そして、彼女はエモーションで俺達に手を振ると白馬に乗って

あっという間に見えなくなって行った。

 

[Party] Hyde >> すげー 馬に乗れるって事はレベル50以上て事かー

[Party] Orli >> ほー どうりで装備も高そうだったわけだ

[Party] Hyde >> つーか、せっかくだからこのまま町まで狩りながら帰ろうぜ

[Party] Orli >> そうだな 町に帰ったら装備も揃えたいし

 

俺達は彼女がかけてくれた魔法が解けないうちに再び狩りを始めた。

 

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