First Kiss −First Love・24−

 

 

学園祭当日―――。

朝、クラス全員で店内に商品の陳列をした。

装飾の方はすでに昨日の放課後に済んでいる。

黒板にも琴美が中心になってメインの看板を描いた。

ちなみに店内の装飾も1/3くらい琴美が作ったものだ。

 

そして、一通り準備が終わって後は開店するだけという時、

いつの間にか琴美の姿が教室から消えていた。

 

「あれ?琴美は?」

いつも一緒にいる藤村さんに聞くと「美術部の部室に行ったよ。」

という答えが返って来た。

 

なんだ・・・もう美術部の方に行っちゃったんだ。

 

がっかり・・・。

 

しかし、俺が肩を落としていると教室に琴美が戻ってきた。

しかも、手には何かを持っている。

 

・・・?

 

「琴美、何それ?」

藤村さんは琴美の右手を指差した。

 

「んとね、昨日中途半端に余った画用紙があったでしょ?

 捨てるの勿体無かったから、それでこんなの作ってみた。」

そう言うと琴美は小さな飛行機を掌に乗せた。

 

それはちょうど駄菓子屋に置いてあるようなゼロ戦だった。

きれいにちゃんと色まで塗ってある。

 

「うわぁっ!すごい!」

藤村さんは琴美の掌に乗っているゼロ戦を見ると感嘆の声をあげた。

余った画用紙で作っただけあって、大きさは掌サイズだけど

精巧な造りだし、色も本物みたいだ。

 

「えへへー。」

琴美は照れたように笑うと、「どこに置こうかなー?」

と、さっそくどこに置くか考え始めた。

 

「せっかくだから、みんなの目に付く場所にすれば?

 レジのトコとかは?あそこなら絶対みんな見るし。

 その大きさなら邪魔にならないだろ?」

俺がそう言うと「あ、それがいいかも!」と琴美はにっこり笑った。

そして、レジの横のスペースにちょこんと置いた。

 

 

―――開店時間になり、段々模擬店の中は賑やかになってきた。

 

レジの横に飾られたゼロ戦は誰かの目に留まる度、

女子からは「小っちゃくてかわいい。」とか「きれい。」とか、

男子からは「かっこいい。」とか「すげぇー。」と言う声が聞こえた。

 

 

午後12時。

俺達、装飾部隊は店番部隊の休憩の間、

店番をする事になっていた。

俺はちょっと早めに先に昼飯を済ませ、

模擬店に出た。

すると、あのゼロ戦がレジの横からなくなっていた。

 

「ゼロ戦は?」

 

「あー、あれならさっき来た小さい男の子にあげたよ。」

そう答えたのは藤村さんだった。

 

「さっきね、お母さんと一緒に来た5歳くらいの男の子が

 ゼロ戦を気に入ったらしくて・・・で、琴美に聞いたら

 『あげてもいいよ。』って言ったからあげちゃった。」

 

「そーなんだ?」

 

なーんだ、残念・・・。

 

俺が貰いたかったんだけどな。

まぁ、でも琴美のことだからきっと俺が貰うことになってても

その男の子にあげてたかもしれないしな。

 

 

店番の担当は琴美と藤村さんがレジ、俺と高杉は接客になった。

後の奴らは駄菓子の補充なんかを手伝う事になった。

 

店番部隊と入れ替わりで模擬店に出ると店内は

俺と高杉の“ファン”がわらわらと集まってきた。

 

一体どこからこんなに集まってきたのか・・・。

 

時間が経つにつれ、人は増えていくのに減っていかない。

みんな俺と高杉の周りをうろうろしながら駄菓子を選んでいる。

 

あぁ・・・うざぃ・・・。

 

早く1時にならねぇかなー。

 

 

1時前―――。

徐々に人が減り始めた。

レジにいる琴美と藤村さんも忙しくなってきた。

 

そしてようやく1時になり、店番部隊が戻ってきた。

それと入れ替わりで俺と高杉も模擬店の裏側へ行った。

 

さて、琴美と模擬店巡りでもしようかなー。

どうせ、藤村さんはまた彼氏のトコに行くんだろうし。

 

そう思って裏で琴美を待っていると藤村さんだけが戻って来た。

 

「琴美は?」

 

「今、レジが込んでるから落ち着くまで手伝うって。」

 

「ふーん。」

じゃあ、まだしばらく戻って来れないか・・・。

ちらりと模擬店の中を覗くとレジ前にはずらりと行列が出来ていた。

 

これはマズい・・・。

早いトコ逃げとかないと出口を塞がれてしまう。

 

琴美とは後で合流するか。

 

とりあえず俺は教室を出て、すでに待ち伏せしていた女子共を

振り切る為ダッシュで逃げた。

 

その甲斐あってなんとか逃げ切れた。

 

さて・・・どこで時間を潰そうか・・・

 

そう思っていると目の前から高杉が数人の女子共を引き連れてやって来た。

俺より一足早く教室を出たにも拘らず、いきなり捕まったらしい。

 

いや・・・違うな。

コイツの場合、捕まるのを承知で・・・というか好きで捕まってるんだと思った。

 

だって、すげぇにやけた顔してるし。

 

つーか、コイツ彼女いるだろっ?

それに、この間キスしてた女子は?

 

まぁ、俺が気にする事じゃないけど。

 

 

そして、高杉の心配なんかして油断して歩いていると

さっき俺を追いかけていた女子に見つかった。

「あっ!ソウ君発見!」

 

うへっ。

 

・・・で、俺はまた逃げるハメになった。

 

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