First Kiss −First Love・23−

 

 

10月に入って、学園祭の準備を始める事になった。

俺達のクラスは駄菓子屋の模擬店で決定。

 

まぁ、その結論に至るまで、

いろいろとごちゃごちゃとあったワケだけど・・・。

 

 

まずはさっそくグループ分け。

買出し部隊、経理部隊、店番部隊、装飾部隊などなど・・・

 

琴美はもちろん装飾部隊に行くんだろうな。

俺も装飾を希望しよっと。

 

学園祭実行委員の鈴木は黒板に役割分担と

だいたいの必要人数、みんなの希望をそれぞれ書いて行った。

琴美は思ったとおり、藤村さんと装飾を希望した。

装飾の定員数は15人。

 

今、希望が出ているのは13人・・・後、2人か・・・。

そろそろ、俺もいっとくか。

 

「「俺、装飾がいい。」」

 

え・・・?

 

俺は同時に聞こえた声の主に視線をやった。

 

げー、高杉っ!?

こいつもかよー。

絶対、琴美と一緒がいいからだ。

 

そして、俺と高杉が装飾を希望した直後、

「あたしも!」

と言う声とともにクラス中の女子が挙手し、

装飾希望者が殺到した。

 

マジかよー。

 

・・・が、しかし、鈴木は今までの傾向を把握して

こうなる事を予測していたらしく、

「装飾のほうは高杉と二ノ宮が入ってもう定員数揃ったからダメ。」

と、キッパリ言った。

そして、女子共からの怒涛のブーイングにも

「文句言うなら最初から装飾希望すればいいじゃん。」

と言って、装飾部隊に決まった人に向け、

「じゃ、装飾部隊は今から何がいるとか

 教室の中をどんな風に使うか話し合ってて。」

とすでに話を進めていた。

 

ぐっじょぶ!

 

装飾部隊に決まった俺達は教室の後ろの方に集まり、

まずは教室の中をどんな風にレイアウトするかを決め、

その後に、だいたい何がどれくらい必要かをリストアップした。

 

 

―――翌日。

放課後、さっそく装飾品の制作に取り掛かった。

今日はポスター作り。

校内に貼る宣伝用だから、一人一枚描いたとしても15枚。

一応、これで足りる予定。

 

琴美はさすが美術部というか、他の奴らが描いているポスターとは

全然違っていた。

何がどう違うって、まず全体のバランス。

目立たせたい箇所とそうでない箇所がハッキリしているし、

バックの絵との文字のバランスにしても俺達“素人”とは違う。

そして、なにより色使い。

派手でもなく、地味でもなく、いかにも『昔の駄菓子屋さん』だ。

色の塗り方一つ取っても綺麗だ。

 

つーか、俺達があーでもない、こーでもないと言っている間に

すでにほぼ完成に近い状態になっていた。

 

それに比べて・・・

 

俺の隣でポスターを描いているコイツ・・・

 

高杉、絵ヘタだなーっ!?

まぁ、俺も絵は上手いほうじゃないけど、

コレは酷い・・・。

 

すると、その酷い絵を見た武田が眉間に皺を寄せながら言った。

「高杉、おまえそれ何描いてんの?」

ちなみにコイツも俺と高杉同様、琴美を追いかけて

装飾部隊に入ったと思われる。

 

「何って・・・見りゃわかるだろ?ビックリマンチョコ。」

 

は・・・?

コレのどこが“ビックリマンチョコ”なんだよっ!

どこからどう見ても“ただの四角い何か”だろっ。

 

それを聞いた武田は「これがぁ〜っ?」とゲラゲラと

腹を抱えながら笑い始めた。

 

「そんなに笑う事ないだろー?」

「いや、だって・・・っ、コレは・・・」

「そういうお前は何描いたんだよ?」

「俺はうまい棒。」

そう言って、ニカッと笑って武田が見せたポスターは・・・

 

コレもまたどこからどう見ても“ただの棒”だ。

 

「お前も人の事、言えねーじゃん。」

「そうかぁ?」

高杉に突っ込まれ、武田は自分のポスターと高杉のポスターを

交互に見た。

 

どっちもどっち・・・目クソと鼻クソだな。

 

 

結局、高杉と武田のポスターの下書きは琴美が手伝う事になった。

 

「琴美ちゃん、ごめんね。美術部の方も準備あるのに。」

琴美がポスターの下書きをしている横で武田が申し訳なさそうに言った。

 

美術部の準備って・・・何かあるのかな?

 

「ううん、大丈夫。展示物はもう完成してるし、

 本格的な準備は前日だから。」

琴美はにっこり笑ってそう言った。

 

「美術部って何やるの?」

「展示会。」

少しだけ琴美の方に視線を向けて言った俺に

下書きの鉛筆を走らせながら琴美が答えた。

 

「琴美は何を出品すんの?」

 

「んとね、油絵1点と水彩画1点。」

 

「へぇー、どんな絵?」

 

「ふふっ、内緒。」

琴美は少し照れたように笑いながら言った。

 

「?」

俺はどうして琴美がそんな顔で言ったのか、

その時はよくわからなかった。

 

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