First Kiss −First Love・19−

 

 

―――放課後。

部活が終わって部室で着替えている時、

「明日は二ノ宮目当てに女の子がわんさか来るだろうなー。」

と、武田がにやけた顔で言った。

 

「琴美ちゃんも来るのか?」

すると、俺のすぐ隣で着替えていた2年生の先輩が言った。

ちなみにこの先輩も琴美に気があるらしい。

といっても、琴美が夏の合宿で俺達バスケ部や高杉達サッカー部を

いろいろと助けてくれたからファンになったみたいだ。

だから合宿以来、バスケ部とサッカー部には

琴美の“ファン”でいっぱいになった。

 

「あー、どうっすかねー?」

武田は首を捻りながら言った。

 

「琴美に練習試合の事言ってないの?」

 

「練習試合があるとは言ったけど、応援に来てくれるとは

 言ってなかったよ?」

 

なぬっ!?

マジかっ。

 

琴美、まだ部活やってるかな?

 

俺は急いで着替えを済ませ、部室を後にした―――。

 

 

だけど昇降口に行くと琴美の靴はもうなかった。

 

あー、遅かったか・・・。

 

まぁ、でも携帯の番号もこの間聞いたしな。

帰ってから電話してみるか。

 

 

家に帰って、先に風呂に入った後―――、

さっそく琴美に電話しようと携帯を開いた。

 

琴美出るかな?

 

初めて好きな女の子にかける電話・・・心臓がバクバクいっている。

メモリーから琴美の携帯番号を呼び出して表示させ、

後は通話ボタンを押すだけだけど・・・

緊張してなかなか押せない。

 

「頑張れっ、俺!」

一人でそんな事を言いながら、思い切って通話ボタンを押した。

 

・・・RRRRRRR、RRRRRRR・・・

 

琴美は数回コール音の後に「もしもし?」と、

少し小さな声で出た。

その声にドキリとしながらなるべく平静を装う為に深呼吸をした。

 

「もしもし、宗だけど。」

 

『あ・・・うん。』

 

返事はあったものの、しばしの沈黙・・・。

 

「あ・・・今、マズかった?」

 

もしかして、今忙しいのかな?

 

『あ、ううん。なんか聞いたことない着メロが鳴ったから、

 こんなの設定した覚えがないけどなーって考えてたの。』

 

琴美は数日前に俺が勝手に仕込んだ着メロに驚いたみたいだった。

 

「びっくりした?・・・あ、ところでさ・・・琴美、明日は暇?」

 

もしかしたら、もう別の予定が入っているかなぁ?

 

『明日?・・・うーん、特に何もないけど?』

 

すると、琴美からあっさり空いていると言われた。

 

お、やったっ!

 

「あのさ・・・明日、バスケ部の練習試合があるんだけど・・・

 応援に来てくれないかなー?って・・・。」

 

『・・・応援ならいっぱい来るんじゃないの?』

 

う・・・冷たい・・・。

 

「俺、琴美に来て欲しいんだもん。」

 

他の女子共の応援なんか正直どうでもいい。

 

「・・・ダメ?」

 

やっぱり、高杉達サッカー部の練習試合ならともかく、

俺の方は応援来てくれないかなぁ・・・?

 

諦め半分で聞くと『・・・ううん、行く。』と、

意外にも琴美は来てくれると言った。

 

「ホント?」

 

『うん。』

 

よっしゃっ!

やったっ!!

 

『どこでやるの?』

 

「3時からうちの学校の第一体育館。」

 

『うん、わかった。』

 

「俺はスタメンじゃないけど試合には出るから。」

 

『そっか、頑張ってね。』

 

「うん・・・それじゃ、明日。」

 

『うん・・・おやすみ。』

 

「おやすみ。」

 

用件だけで終わってしまったけれど、電話を切ってからもしばらく

俺の心臓はバクバクいっていた。

 

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