First Kiss −First Love・18−

 

 

「琴美・・・?俺だよ。」

 

ホントに俺がわからないのか・・・?

 

俺が少しだけ顔を近づけると

「シュ・・・ウ・・・?」と、不安そうな声で琴美が言った。

 

「うん・・・俺だよ。」

 

よかった・・・とりあえず、俺だとわかってくれた。

 

でも・・・

 

「琴美・・・もしかして・・・俺の顔、見えてない?」

 

「うん・・・。」

 

やっぱり・・・。

 

琴美は眼鏡がない所為か俺の顔が見えていないみたいだった。

 

 

「琴美、視力いくつ?」

 

「んと・・・右が0.05で左が0.06。」

 

「えっ!?そんなに悪いのか!?」

手を繋いで琴美を昇降口まで連れていった後、

どんだけ視力が悪いのかと思って聞いてみた。

すると、琴美の視力は俺の予想より遥に悪かった。

 

「じゃあ・・・あの雨の日の時も全然俺の顔見えてなかったんだ?」

 

あの時も琴美は眼鏡を外していた。

 

「憶えてない?3月14日。突然大雨が降り出してさ、

 雑貨屋の前で雨宿りしてた時。」

 

「宗・・・憶えてたの・・・?」

琴美は意外そうに言った。

 

「うん。・・・これ・・・くれただろ?」

俺は携帯を出してあの恋愛成就のハートの鈴のストラップを見せた。

 

「・・・つけてたんだ?」

 

「うん。だってコレ恋愛成就のお守りだろ?

 ・・・だからつけてる。」

 

「宗はそんなのつけなくても成就するでしょ?」

琴美はクスッと笑った。

 

「そんな事ないよ?」

 

現に、俺の恋愛はまだ成就してないし・・・。

 

「あ、そういえば・・・あたしもつけてるんだよ。」

琴美はカバンの中をゴソゴソと手探りで携帯を探し出し、俺に見せた。

 

「ホントだ。」

あの時、俺が琴美にあげた翡翠のストラップがつけてある。

 

「てか、今さらだけど・・・あたしがもらってよかったの?」

「ははっ、ホントに今さらだなー。」

「宗のお気に入りだったんじゃないの?」

「確かに俺のお気に入りだったよ。」

「えー、じゃ、やっぱりあたしがもらっちゃマズかったんじゃないの?」

「違うよ。お気に入りだから琴美にあげたんだよ。」

 

また、きっと会える気がしていた。

また、会いたいって思った。

だから、琴美に持っててもらいたかった。

俺のお気に入りのモノを琴美につけててもらいたかったんだ・・・。

 

「どーゆー意味?」

琴美は俺が言った言葉の意味がわからなかったらしい。

ちょっと間があった後、不思議そうな顔をした。

 

「・・・俺の恋愛が成就したら教えてあげる。」

 

「うん、わかった。」

琴美は俺の片想いの相手が自分だという事に

まったく気付いていないからか、コクコクと頷いた。

 

 

「あ、そだ・・・前から聞きたかったんだけどさ・・・」

「ん?」

「携帯番号教えて?」

「・・・誰の?」

 

ぶはっ。

またボケた事言ってる。

 

「琴美のに決まってんじゃん。」

俺が笑いながら言うと「え・・・あ、うん。」と、

琴美はコクンと頷いた。

 

そして、琴美から番号を聞いた俺はそのままメモリー登録をして、

すぐに琴美の携帯にかけた。

 

てか、眼鏡がないからきっと帰ってからメモリー登録するんだろうな。

 

あ、でも・・・待てよ。

俺がここでメモリー登録して、ついでに着メロ設定までやっちゃお。

 

「ちょっと携帯貸して。」

琴美の手に俺の携帯を持たせ、琴美の携帯のメモリーに俺の携帯番号を登録した。

もちろん、俺からの着信の時だけ他とは別の着メロにした。

 

うひひ。

琴美びっくりするだろうなぁー。

 

「へへーっ、琴美の番号げっと!」

俺は心の中でガッツポーズをした。

 

 

―――週末、金曜日。

明日はライバル校と練習試合がある。

もちろん、俺もレギュラーだから試合には出るワケだけど。

その事が決まってからずっと琴美に応援に来て欲しくて

琴美の携帯番号がわかればなぁ・・・て思って

話しかけるタイミングを狙っていた。

別にまた部活終わりに待ち伏せしてもよかったんだけど、

あんまり待ち伏せしてるとなんかストーカーみたいで

嫌がられるかな・・・?と思った。

 

だから数日前、琴美に携帯番号を教えてもらった時は

マジで嬉しかった。

 

 

休憩時間、いつものように女子共が俺の所に集まってきた。

 

うぜぇー。

どーせなら、お前らみんな高杉のトコに行けよっ。

 

そんな事を思っていると、

「ねぇ、ソウ君、明日練習試合でしょ?あたし応援に行くねー。」

「私も行くー。」

「あたしも行くもん。」

と、数人に言われた。

 

「え・・・なんで知ってんだよ?」

 

琴美にしか応援に来て欲しくないから誰にも言ってないのに・・・。

 

「さっき武田くんが言ってたよ。」

 

武田のヤツ・・・余計な事をー。

 

「・・・。」

俺は無言で武田を睨みつけた。

すると、武田はにこにこしながら琴美と藤村さんと話していた。

 

また琴美と喋ってる・・・。

てか、もしかして琴美はもう練習試合の事、

武田から聞いたかな?

トーゼン聞いてるだろうなぁ・・・。

 

・・・て事は、武田がもう先に応援に来て欲しいって言ってるかもな・・・。

 

ちくしょー、俺から応援に来てって言いたかったのにー。

 

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