First Kiss −3−

 

 

無事(?)に席決めも終わって、やっとHRが始まった。

担任の先生からあれやこれやと校則の話に始まり、後は年間行事、

クラブ活動、選択授業についての説明があった。

 

あたしはどのクラブに入るかもう決めていた。

美術部。

絵を描くことが好きだから。

というか“モノを作るコト”が好きだから。

 

メグちゃんはバレー部。

中学の時から始めて、この高校に入ったのもバレー部が強い事で有名だから。

 

選択授業は音楽か美術のどちらかを選択する。

あたしはもちろん美術。

この高校の美術の授業は絵を描くだけじゃなくて彫刻や粘土、

シルバークレイでアクセサリーを作ったり、陶芸なんかもやるらしい。

あたしがこの高校に進学を決めた理由が実はこれだったりする。

 

メグちゃんも、とりあえずどっちでもいいからと

あたしと一緒に美術を選択する事に決めた。

 

高杉くんは音楽を選択するらしい。

よかった・・・楽しみにしてた選択授業まで一緒だったらホント地獄。

 

しかも、高杉くん派の女子まで一緒になったりなんかしたら、

うるさくて授業になりそうにないもん。

ちなみに、二ノ宮くんも音楽を選択すると公言していた。

これでほとんどの女子は音楽の方に行く。

男子も半数は音楽に行くみたいだ。

というのも、音楽の方はいくつかのグループに分かれてバンドを組んだりするらしい。

“モノを作る”という事に関心がない人はだいたい音楽へ行く。

 

・・・と言うワケで美術の方は余計な邪魔が入りそうにない。

今から選択授業が楽しみになってきた。

 

 

週末の金曜日。

楽しみにしていた週に一度の選択授業の日がやってきた。

あたし達のクラスは6時限目と7時限目。

2時限続けて時間割してあるのは音楽はともかく、

美術のほうは製作に時間がかかるものもあるからだろう。

 

 

メグちゃんと一緒に美術室に移動し、ドアを開けると数人の男子がいた。

女子は一人もいない。

案の定、みんな高杉くんと二ノ宮くんを追いかけて音楽の方を選択したようだ。

 

予鈴が鳴って、さらに数人の男子がわらわら入ってきた。

あたしは何気なく入ってくる人物を眺めていた。

 

・・・あれ?

 

二ノ宮くん?

 

最後に二ノ宮くんが入ってきた。

音楽の方を選択したんじゃなかったの?

 

「二ノ宮、おまえ音楽の方行ったんじゃなかったのか?」

・・・と、誰かが二ノ宮くんに突っ込みを入れた。

 

そーだ、そーだ。

 

「いや、こっちの方がおもしろそうだったから、昨日こっそり変えた。」

そう言って二ノ宮くんはにやりと悪戯っぽく笑った。

 

要するに女子を騙して自分だけこっちに流れてきたのね。

なかなかやるな・・・。

 

・・・二ノ宮くん派の女子・・・かわいそ。

 

 

数日後。

今日は遠足。

気持ちのいい五月晴れになった。

 

バスに乗って『大自然公園』とやらに行くらしい。

園内には植物園とか池とか運動場とか展望台とか

サイクリングコースがあったり、ハイキングコースがあったり・・・。

とにかくいろいろあるらしい。

 

あたしは小さなスケッチブックとデジカメを持って行った。

 

メグちゃんと一緒にバスに乗り込むと一番後ろの座席に高杉くんと二ノ宮くんが座っていた。

そして女子はもちろん全員後ろに固まっている。

 

そんなワケで前の方は担任の先生とあたしとメグちゃん、

後は男子ばっかりになった。

ここでもまた逆ハーレム状態。

 

 

午前10時に『大自然公園』に着いて、そっから午前中は植物園の中を見学。

普段あまり見られない花や木がたくさんあって、

ホントは全部スケッチしたいところだけど時間が限られているからそうもいかない。

そんな時の為にあたしはデジカメを持ってきたのだ。

『描きたい!』と思った花や木をバシバシ撮っていく。

 

帰ってからゆっくりスケッチしよう。

 

「相変わらず撮りまくってるねー。」

メグちゃんは隣でクスクス笑っていた。

それはそうだろう。

だってフツーは友達とか撮るしね。

 

「メグちゃん、後で西山くんと撮ってあげるね。」

あたしがそう言うとメグちゃんは嬉しそうに「うん!」と笑った。

 

西山くんとはメグちゃんの彼氏。

メグちゃんと同じく中学からバレーをしている。

クラスは違うけど西山くんも男子のバレー部が強いこの高校に入った。

二人ともバレーをやっているせいか気も合うみたいで

いつも仲良し。

 

 

昼食の時間になり、あたしとメグちゃんは西山くんと合流した。

なんとなく、あたしは邪魔者のよーな気がするけど・・・まぁ、いいか。

お弁当の後は帰りの集合時間まで別行動するつもりだし。

 

 

お弁当を食べ終わって、しばし三人で撮影会。

その後、あたしはメグちゃんと西山くんと別れて

絶景ポイントを探しにハイキングコースへと向かった。

もちろんスケッチをする為。

ハイキングコースならあまり人が来そうにないし、

一人で静かにスケッチするにはいいかも。

 

だけど・・・ハイキングコースとは言え、結構キツい・・・。

登山・・・?

そんな感じだ。

 

 

“登山”を始めて約30分くらい経ったところで

少し開けた場所に着いた。

何もないトコだけど見晴らしは良さそうだ。

下を見下ろせる位置まで歩いていくと

思ったとおりの絶景が広がっていた。

 

クリスタルを思わせる植物園の建物、

その横に広がる色とりどりの花壇。

そしてさらにあちこちに緑があって、大きな池も見える。

 

ここがいい、ここがいい。

 

結構登ってきたからこんなトコ誰もこないだろうし。

ゆっくりスケッチできそうだ。

 

集合時間から逆算し、早めに下りる事を考えても

2時間くらいはここにいられそうだ。

あたしはさっそくスケッチブックを開いて描き始めた。

 

 

勢いで描き始めたせいか、いつもより鉛筆のスピードが速い。

それでもスケッチを始めてずいぶん時間が経ったと思う。

 

「すげーっ!絵、上手いじゃん!」

突然、後ろから声がした。

あたしはその声に驚いて振り返った。

 

あ・・・。

 

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