First Kiss −2−

 

 

あたしはまだ手の中にある翡翠のストラップを眺めていた。

大事なモノだったんじゃないのかな?

なんとなくそんな気がした。

だけどどこへ行ったかもわからないし、

何より眼鏡をかけていなかったから顔がまったくわからない。

こーゆー時、目が悪いと損だな・・・と、つくづく思う。

 

・・・かと言って、いつまでも手に持っていても仕方がない。

 

“貰ったお礼に・・・”

 

彼はそう言った。

あたしも“ありがとうございます。”と言って、受け取っちゃったワケだし。

 

 

あたしは携帯を出して、翡翠のストラップをつけた。

なんだか、ついさっき失恋したコトなんてすぐに忘れられる気がした。

 

ついでに髪・・・切ろうかな。

 

中1の頃から伸ばしはじめた髪。

高杉くんが長い髪の子のほうが好きって噂で聞いたから・・・。

実際、今まで高杉くんと一緒に歩いていた女の子はみんな髪が長かったし。

 

あたしは、そのまま勢いに任せて髪を切るコトにした。

 

どうせなら思いっきりショートにしてみようか。

人生初のショート。

似合わないかなぁ?

 

 

結局、あたしは胸の上あたりまであった髪をバッサリと切った。

・・・でも、ショートじゃなくて・・・一応ボブ。

ショートに近いボブ・・・と言った感じ。

 

美容師のお兄さんも“せっかくきれいな髪なのにもったいない。”

と、言ってくれた。

でも切りたかったの。

バッサリと。

 

そうすれば高杉くんのコトなんてすんなりと忘れられる気がした。

 

現に失恋したばっかりなのにもう涙も出てくる気配もない。

3年間片思いだったのにな。

 

だけどもう会うコトもない・・・。

 

 

・・・4月、高校の入学式。

真新しい制服に身を包んで、小学校の頃からの親友・藤村恵ちゃんと一緒に

クラスの振り分けが張り出されている掲示板を見に行った。

 

「琴美!あたし達同じクラスだよ!」

メグちゃんはあたしより先に自分の名前とあたしの名前を見つけ出したようだ。

「えっ!?ホント?どこ、どこ?何組?」

「3組だよ。」

メグちゃんの言ってた通り、3組にあたしとメグちゃんの名前があった。

 

 

さっそくメグちゃんと一緒に1年3組の教室へ行った。

中にはすでに何人かの生徒達が座っていた。

とりあえずみんなテキトーに座っているらしい。

あたしとメグちゃんも窓際の席に並んで座った。

 

時間が経つにつれ、教室には次々と生徒が入ってきた。

 

そして・・・その中にはあの高杉和也くんの姿もあった。

 

え・・・?

 

なんで?

なんで高杉くんがいるの?

 

あたしが唖然としていると、

「高杉くん、第一志望の高校に落ちたらしいよ。」

メグちゃんがそう耳打ちしてくれた。

「そう・・・なんだ。」

あたしはとりあえずそう答えるしかなかった。

 

てゆーか・・・よりにもよって同じクラス?

 

もう会えないと思って告白した・・・。

・・・で、見事に失恋した。

その相手が目の前にいる・・・。

正直・・・どんな顔していいかわからない。

ここは・・・気がついていないフリでもする・・・?

 

そう思って高杉くんと目を合わさないようにしていると

「よぅっ!」

高杉くんのほうから声をかけてきた。

 

バカバカバカーーーーーーーッ!

なんで声なんかかけるのよ?

 

「・・・。」

あたしは引き攣った顔のままで高杉くんを見上げた。

 

「平野さんと藤村さんも同じクラスだったんだ?」

そう言って笑顔を浮かべる彼は相変わらず爽やかだ。

彼とは中学の時、同じクラスになるコトはなかった。

3週間前のあたしなら彼と同じ高校・・・同じクラスになったコトを

泣いて喜んだんだろうな。

 

だけど・・・今はどっちかと言うと地獄。

つい3週間前にあたしをフッた人。

メグちゃんにもそのコトは話した。

だからメグちゃんも顔が引き攣っている。

 

何もフラれてから彼と同じクラスになるコトはないのに・・・。

 

高杉くんが何かを言おうと口を開きかけた時、担任の先生が教室に入ってきた。

 

助かった・・・。

 

あたしはメグちゃんと顔を見合わせて苦笑した。

 

 

HRの前にさっそく席決め。

各自自由に席移動。

早い物勝ち。

 

あたしとメグちゃんはそのまま座っていた窓際から動かなかった。

別にどこでもよかったから。

 

高杉くんの周りは女の子ばっかりになった。

まぁ・・・予想はしていたけど・・・。

 

そして、クラスの中にはもう一人イケメンがいた。

二ノ宮宗くん。

高杉くんとはまた違うタイプのイケメン。

高杉くんより少し背が高くて、可愛い顔をしている。

当然、二ノ宮くんの周りも女の子がいっぱいになった。

そんなワケでクラスの中の女子は“高杉くん派”と“二ノ宮くん派”の二手に分かれた。

あたしとメグちゃんを除いて・・・。

 

高杉くんと二ノ宮くんがど真ん中の席に前後に並んで、

その周りを取り囲むように女子が座り、

さらにその女子の周りに男子。

おかげであたしとメグちゃんは男子に囲まれた。

 

高杉くんと二ノ宮くんがハーレム状態なら

あたしとメグちゃんは逆ハーレムだ。

 

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