First Kiss −24−

 

 

第3クォーターに入ってから宗へのパスが全然回っていない。

完璧にマークされて動きを封じられている宗は少し苛立った顔をしている。

だけど、宗にぴったりくっついている分、他の選手は手薄。

宗の動きを封じても他の選手がシュートを決めていく。

 

点数は40対50。

 

まだうちのバスケ部が勝っている。

 

ここで第3クォーターが終わってインターバル。

相手チームもかなり疲れてきている。

うちのバスケ部は・・・少しマシ・・・かな?

 

両チームともメンバーを少し入れ替えて第4クォーターが始まった。

宗は引き続き試合に出るみたいだ。

 

相手チームは宗にだけ気を取られていてはマズいと思ったのか、

宗へのマークが少し外された。

 

だけど、宗はほとんどフル出場に近い状態だし、

マークに張り付いてる相手の選手は交代したばかりの人。

素早い動きでなかなか宗にシュートを決めさせてくれない。

しかもそれに加えて、相手チームも最後の攻めと言う感じで

次々とシュートをうつ。

 

52対50。

 

・・・とうとう逆転された。

試合も終わりに近づき宗も最後の攻め。

シュートするのかな?と思ったら普通にドリブルしたり、

ドリブルかな?と思ったらいきなりシュートをした。

 

フェイクを挟んで相手のマークを外してからのシュート。

ボールがバスケットの中をするりと通り過ぎた瞬間、

女の子達の湧き上がる黄色い声の中、

審判のホイッスルが鳴り響いた。

すると相手チームの選手がちょっと顔を顰めた。

 

「今の何?」

バスケのルールがよくわからないあたしは誠に聞いた。

 

「パーソナル・ファウル。」

 

なんじゃそりゃ?

 

「今のシュウさんがシュートうってる時に相手チームの人が

 わざと邪魔したでしょ?」

 

あー、そー言われてみれば。

宗のマークに張り付いていた人が押してたね。

あたしから見てももろ故意にやった感じ。

 

「どーなるの?」

 

「今のはシュートが決まったから1本のフリースロー。」

 

試合は後、残り30秒きっていた。

 

52対52。

 

ここで宗のフリースローが入れば勝つ。

宗は審判からボールを受け取ると、フリースローレーンに立った。

 

そしてボールを軽くおでこに当てて、祈るように目を閉じてから

ゆっくりとシュートの体勢に入った。

 

宗の手から放たれたボールは弧を描いてバックボードに当たり、

クルクルとバスケットのリングを縁取って吸い込まれていった。

 

入った・・・!

 

「やった!」

「うん!」

あたしと誠は顔を見合わせた。

 

コートの中では宗もチームのメンバーと一緒に笑みを浮かべていた。

 

その笑顔は汗でキラキラと光ってさえいる。

すごく綺麗で・・・すごく嬉しそう。

あたしはその笑顔にまたやられた。

 

なんか・・・やばいよ・・・あたし。

 

そして見惚れたままボーッとしているあたしをまた現実に引き戻したのは

試合終了を告げるホイッスルの音だった。

 

「姉ちゃん、勝ったね!」

誠は嬉しそうにコート中央に集合した宗達バスケ部のメンバーを見つめていた。

 

「うん!」

あたしも宗の姿を目で追った。

相手チームの選手と握手をして、仲間の選手とハイタッチしている。

 

そして・・・

 

宗はあたしと誠に視線を向けるとにっこり笑って手を振ってくれた。

 

誠は手を思いっきりブンブンと振っている。

 

・・・あたしはちょっとだけ笑って小さく手を振った。

 

だって・・・

ほら、ほら、ほらっ!

目の前にいる女の子達の視線がすごいしー。

 

「姉ちゃん・・・こ、怖いよ・・・。」

「・・・だ、だから・・・気にしなきゃいいんだってば・・・。」

あたしがそう言い終わるか終わらないかぐらいに

女の子達はまたすぐに宗へと視線を戻した。

 

 

試合が終わった後、あたしと誠はそのまま帰る事にした。

宗もバスケ部で反省会とかミーティングあるだろうし、

なにより女の子達がいるし・・・

それに・・・当然、彼女も来てるだろうし・・・。

 

 

―――・・・♪〜♪#♪〜・・・

 

あたしと誠が駅に向かって歩いていると、

宗から電話がかかってきた。

「もしもし。」

『もしもし、宗だけど・・・今どこ?』

「あー、えーと・・・もうすぐ駅・・・かな。」

『えーっ!もう、帰ってんの?』

「あ・・・うん。」

『琴美の事探してたのにー。』

「え・・・いや、だって・・・女の子達いっぱいいたから、

 きっとそっちに行くと思って。」

 

それに彼女も来てるでしょ?

 

『琴美と話したかったのにー。』

 

・・・て、そんなコト言われても・・・ねぇ?

 

『ちゃんと会ってお礼も言いたかったのにな。』

「あはは、いいよ・・・そんなの。」

『だって、わざわざ差し入れまで持って来てくれたのに。』

 

宗って・・・意外と律儀だな。

 

『後、誠も一緒に応援に来てくれてただろ?』

「あ、うん。」

『ありがとな。』

「ううん。」

『・・・じゃあ、誠にもよろしく言っておいて。』

「うん、わかった。お疲れ様・・・じゃあね。」

それだけで電話は終わってしまったけど、

宗がわざわざ電話をくれたのは正直嬉しかった。

 

「今のシュウさん?」

「うん。」

「姉ちゃんのコト、探してたんじゃないの?

 さっさと帰っちゃったからがっかりしてたでしょ?」

「うん、なんかそうみたい。」

 

弟よ・・・いつからそんなに鋭くなったんだ?

 

「誠にもよろしく言っておいてって言ってたよ。」

「ホント?」

「うん。」

 

「俺もシュウさんみたいにバスケ上手くなりたいなぁー。」

「頑張ればなれるんじゃない?」

「そうかな?」

「うん、誠はあたしと違って運動神経はいい方だしね?」

「はは、確かに。」

 

こらこら。

 

 

―――月曜日。

部活が終わると、またまたいつものように?

正門で宗に待ち伏せをされていた。

 

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