First Kiss −25−

 

 

「琴美を待ってたんだよ。」

あたしがキョロキョロする前に宗はニヤッとした。

 

て、ゆーか・・・

 

隣にはなぜか高杉くんもいる・・・。

なんで・・・?

 

「コレ、ありがとう。」

宗はそう言ってあたしがレモンの蜂蜜漬けを入れて行ったタッパーを返してくれた。

 

「あ・・・うん。」

 

きれいに洗ってある・・・。

 

「わざわざ洗ってくれたんだ?」

 

「当たり前だろー?」

宗はククッと笑った。

 

別にそのままでもよかったのに。

 

「すごく助かったよ、ありがとう。」

宗は柔らかい笑顔をあたしに向けた。

 

・・・キュン。

 

その笑顔にときめくあたし・・・。

 

「琴美のおかげで試合に勝てた。」

 

キュン―――

そんなコト言われると・・・

 

「琴美の差し入れがなかったら俺、頑張れなかったし。」

 

「そ、そんなコトないでしょ。」

頑張れたのは彼女の応援のおかげ・・・じゃないの?

 

「先輩達もすっごく喜んでたよ。」

 

あー、そーゆー意味ね。

レモンの蜂蜜漬けはスタミナ回復にはいいって言うしね。

 

「んじゃ、言いたい事はそれだけだから俺は先に帰るよ。」

そう言うと宗は一人でさっさと歩き始めた。

 

はぁっ!?

なんでっ!?

一緒の方角なのにっ。

一緒の駅で降りるのにっ。

 

「ちょ・・・宗、待っ・・・」

宗を追いかけようとして、腕を掴まれた。

 

「せっかく気ぃ使ってくれてんだし、いいじゃん。」

高杉くんだった。

 

そーいえば高杉くんもいたんだった・・・。

 

“気ぃ使ってくれた”って、何に?

むしろ、あたし的には高杉くんと二人きりにされる事のほうが地獄なんだけどっ!

 

再び宗に目を向けると、宗はどんどん小さくなって、

あっという間に見えなくなっていった。

 

歩くの早いよ・・・宗。

 

あたしはなんだかこのまま、また宗が離れて行ってしまう気がした・・・。

 

 

宗の後姿が見えなくなっても、あたしがずっとその方向に

目を向けたままでいると高杉くんが話しかけてきた。

「土曜日、アイツの練習試合見に行ったんだ?」

 

「あ、・・・うん。」

 

「じゃあ、今度は俺の方にも来て?」

 

「都合が合えば・・・。」

とりあえずそう言って誤魔化す。

だって・・・あまり見に行きたいとは思わないから。

 

「あ・・・ところで、高杉くんがこの時間に帰るって珍しいね?」

 

「うん、いつもはもう少し早いんだけど今日はたまたま

 部活が長引いたから。」

 

「そーなんだ。」

 

「そしたら二ノ宮が正門のところに突っ立ってるから、何やってんだ?

 って、聞いたら平野さん待ってるって言ったから俺も一緒に帰ろうと思って。」

 

それで宗と一緒にいたんだ。

 

「平野さん、いつも二ノ宮と一緒に帰ってるの?」

 

「別にそーゆーワケじゃないけど。」

 

「二ノ宮が勝手に待ってただけ?」

 

勝手に・・・

まぁ、勝手にと言えばそうだけど・・・。

 

「付き合ってるの?」

 

「へ?」

 

「二ノ宮と。」

 

「ううん。」

 

そんなワケないじゃん。

 

宗には彼女いるんだし。

あんな恋愛成就のお守り付けてるくらいだし・・・て、

 

あれ?

 

そーいえば・・・彼女がいるんならあのお守りいらないじゃん?

 

あ・・・でも、宗の口から彼女がいるとは聞いたことがないし・・・

それなら彼女はいないとしても好きな子はいるって事だよね。

 

・・・そーだよね。

 

て、コトは・・・早々とあたし・・・失恋?

 

でも今回は高杉くんの時みたいに3年間片想いしたワケじゃないし。

傷は浅い・・・のかな?

今年、2度目の失恋・・・。

しかもまたまたイケメンのチャラ男。

 

 

・・・それからの高杉くんとの会話は正直まったく憶えていない。

多分、全部テキトーに返事をしてた。

一緒に駅の改札を出て、また明日・・・と言ったのは憶えてるけど。

 

そして、高杉くんにフラれた時よりも傷は浅いはずなのに、

まだ告白もしていないうちから失恋したショックは

あたしが思っていたより大きかった・・・。

 

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