First Kiss 続編・1 on 1 −3−

 

 

部活が終わって、正門に行くと琴美の方が先に待っていた。

 

「琴美ー、お待たせー……て、え?」

 

しかし、何故か数人の生徒も一緒にいた。

 

(?)

 

そして、俺と琴美が歩き始めると後ろからその子達も一緒についてきた。

 

(……んん?)

 

「こ、琴美……後ろの子達は何なのかな?」

 

「えっと……美術部に入部した一年生なんだけどー……」

 

「へー、さっそく入部希望が来たんだ?」

 

「うん。なんか、部活案内の時に流れたスライドであたしの作品に

 感動したとか言って……」

 

「おぉっ、すごいじゃん。それって琴美のファンて事だろ?」

 

「そうなのかな?」

 

「くっついて来てるって事はそうだろ」

ちょっとうざいけど。

 

「てか、そんな動機でよく長谷川先生が入部を許可したなー?」

 

「うん。長谷川先生は『部員数が増えてラッキー♪』とか言ってたし」

 

「はは、そうなんだ?」

 

「でもあたしの作品に感動して入ってきた子より、秋川先輩目当てで

 入ってきた男子の方が多いんだよ?」

 

「うっひゃ」

さすが全校で第二位なだけはある。

 

「その子達も長谷川先生、入部OKしたの?」

 

「うん」

 

部員が増えるなら何でも有りなのか。

……てなことを話していると後ろがなんだか騒がしくなってきた。

 

振り向いてみると秋川先輩と十数人の男子達だった。

 

「噂をすれば……て、あれ全部、今日入部した奴ら?」

 

「うん」

 

「バスケ部とはえらい違いだな」

 

「バスケ部には入部希望者来なかったの?」

 

「いや、来たよ。マネージャー希望の女子がわんさか」

 

「あはは、さすが校内一のイケメンがいるクラブは違うねー?」

琴美はからかうようにププッと笑った。

 

「でも、全員岡嶋先生が断った」

 

「そういえば、去年の今頃もそんな事がなかった?」

 

「うん、あった」

 

「なんでいつも岡嶋先生、断っちゃうんだろー?

 もしかしたら本気でマネージャーやりたいって子がいるかもしれないのに」

 

「あー、それ俺も去年聞いたなー、なんかさ、昔同じ様な事があったんだって。

 背が高くて、運動神経抜群で、頭も良い超イケメンがバスケ部にいてさ、

 それでその人目当てにマネージャーになりたいっていう女子が殺到して、

 とりあえずその子達全員の入部を許可したのはいいんだけどなんせ人数が多いし、

 目的がその人目当てだからちょっとでも他の子が抜け駆けしたら

 すぐ喧嘩になって大変だったらしい。

 しかも、マネージャーは部員全員の面倒をみなきゃいけないのに

 そのイケメン君の言う事しか聞かなくて他の部員から大ブーイングで、

 結局、その女子達はバスケ部から追い出されたんだって」

 

「ふーん……、だからなんだ」

 

俺はこの時、美術部にも同じ様な事が起きなきゃいいけど……なんて思っていた。

 

 

 

 

――数日後。

美術部にはさらに新入生が入部した。

俺と琴美の後ろにくっついて帰る子がまた増えていたのだ。

全員女子。

しかも、その女子というのが先日バスケ部への入部を断られた内の三人で

さらにその中には岡嶋先生に食って掛かってた子がいた。

 

結局、あの女子達はサッカー部でも同じ様な理由でマネージャーを断られたらしい。

 

(それで何故に美術部?)

 

マネージャーがやりたいと言ったからには野球部とか男子バレー部に行くと思っていたのに。

 

……なんだか嫌な予感がした。

 

 

そして、さらに三日後、俺の予感が見事に当たった。

 

その日の帰りは久しぶりに琴美と二人きりになれた。

ここ最近、ずっと美術部に入った新入生達が俺と琴美の後ろをついて来ていた。

しかし、今日は一人も居ない。

 

「今日“ファンの皆さん”は?」

 

「……全員、辞めちゃった」

溜め息混じりに答えた琴美はなんとなく元気がなかった。

 

「全員っ!? なんで?」

 

「んー……新入生の子達ね、喋ってばっかりで全然真面目に部活してなかったの。

 そりゃあ、あたし達だって部活中に喋る事はあるけど他の人の邪魔にならないように

 小声で喋ったり、集中してる時が多いから必要以上に話し掛けたりしないんだけど、

 新入生の子達はまったくそういう事気にしてなくて、部長に何度も注意されてたの。

 だけど、全然静かにしてくれないし、絵を描いたりとか部活らしい部活もしないから

 部長から長谷川先生に言って注意してもらったの、そしたら全員辞めちゃった……」

 

「そっか……」

 

(やっぱりな)

 

「でも、なにも辞めることはないのになー?」

 

「長谷川先生が『やる気がないんなら、真面目にやってる部員達の迷惑になるから辞めてくれ』って……」

 

「うぉっ、長谷川先生も言うねぇー。まぁ、でも何回も注意してたんだから当然か。

 てか、琴美のファンはやる気あったんじゃないの?」

 

「んー、それがそうでもなかったみたい」

 

「ふーん……なんかよくわかんねぇ奴等だな」

まぁ、何はともあれ、うざいのがいなくなってよかった、よかった。

 

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