キューピッド・ゴブリン −4−

 

 

俺はパソコンの画面の前で話しかけてみようか、

どうしようか迷った。

 

だけど・・・

 

迷っているうちに彼女はどこかへと行ってしまった。

 

あ〜ぁ・・・、結局話しかけられなかった・・・。

てか、あの子も結構遅い時間までやってるんだな。

 

高校生ならいくら夏休みに入るからと言っても

だいたいこんな時間までゲームをやってて親がうるさくないワケがない。

一人暮らしの大学生か社会人なのかもしれない。

 

まぁ、俺のトコみたいに放置されてるって可能性もあるけど。

 

 

―――8月。

 

俺と大山は連日昼過ぎから夜遅くまで、それこそメシと風呂以外の時間、

睡眠時間もそこそこにずっとゲームをやっていた。

おかげで二人ともレベルも順調にあがり、25になった。

 

そして、いつものように先にゲームにログインした俺は

一人で狩りをしながら大山が来るのを待っていた。

しかし、今日はやけに遅い・・・。

いつもなら遅くても午後2時過ぎには来るのに。

時間はすでに午後3時を過ぎていた。

 

まぁ、何か調べてから来るのかもしれない。

 

そう思って深く考えずにいた。

 

 

午後7時。

結局、大山はこの時間まで入って来なかった。

俺は晩メシと風呂に入る為、一旦ゲームからログアウトした。

 

 

午後10時前。

さすがにそろそろ大山も来てるかな?と思いながら

ゲームにログインした。

しかし、大山はまだ来ていなかった。

 

俺は仕方なく夏休みの宿題をしながら待つことにした。

まったりだけど一人でずっと狩りをしていたから

レベルがあがってしまっていた。

別に大山から待っててくれと言われたワケじゃないけど

アイツと一緒に始めたゲームだし、あんまり差がついたら

アイツがおもしろくなくなるだろうと思ったからだ。

 

それに、夜になって少しだけ涼しくなったおかげで

宿題も捗りそうだった。

 

 

そして、待つこと2時間余り。

すでに日付も変わってしまった。

 

この時間からアイツが来る事は有り得ないだろう。

 

すっかり宿題も片付いてしまった。

 

大山も宿題を片付けていたのかもしれないな。

 

 

―――翌日。

今日は登校日。

生の大山と会うのは久々だ。

夏休みに入ってからゲームの中では会っていたものの

話すのもチャットばかりだったし。

 

 

教室に入るとすでに大山は来ていた。

 

「おぃっすー。」

まだ眠いのか机に顔を伏せたまま動かない大山の背中を

ツンツンしてみた。

すると、大山はゆっくりとした動きで顔をあげ、

俺の方を振り返った。

 

「おぅ・・・。」

 

「なんだ、まだ寝ぼけてんのか?」

 

「そうじゃねぇよ・・・。」

 

「どうしたんだ?コーヒー牛乳も飲んでないじゃん。

 体調でも悪いのか?」

コイツは毎朝、学食でコーヒー牛乳を買ってきて飲んでいる。

体調が悪い日以外は。

 

「至って健康・・・。」

「んじゃ、サイフ忘れたとか?」

「違う・・・。」

「もしかしてコーヒー牛乳が売り切れだったとか?」

「違う・・・。つーか、今日は学食すら行ってねぇし。」

「じゃ、なんだよ?」

コイツが学食にも寄らず真っ直ぐ教室に来たという事は

体調不良以外考えられないけど、本人は健康だって言ってるし、

さっぱり見当がつかない。

 

「消された・・・。」

 

「あ?」

 

「キャラクター・・・。」

 

「へ?」

 

キャラクターって、まさか・・・

 

「あのゲームのキャラ・・・。」

 

「えっ!?」

 

まぢか?

 

「なんでまた?」

 

「連日連夜、宿題もせずにやってたら

 とうとう親の雷が落ちてさー。」

 

「あらら・・・。」

 

つーか、コイツ宿題もせずにやってたのかよ。

 

「それで昨日、入ってこなかったんだ?」

 

「あぁ・・・。」

 

「その様子じゃ復活は無理そうだな?」

 

「復活どころか、ノートパソコンまで取り上げられた・・・。」

 

「あちゃ〜っ。」

 

こりゃ、相当な雷が落ちたと見た。

 

「つーワケで、俺はもうあのゲームできねぇし、

 もし、ノーパソ返してもらったとしても

 またハマッて取り上げられそうだからやめるよ。」

 

「そっか・・・。」

 

こういう時、親に放置されててつくづくよかったと思う・・・。

 

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