First Kiss −First Love・15−

 

 

膨れっ面の琴美をようやく宥めつかせて、

一緒に露店を回っていると、前方から高杉と武田が近づいてきた。

 

む・・・邪魔者現る?

 

「お、二ノ宮と平野さんだ。」

なるべく気付かれないようにそーっと方向転換しようとしていると

運悪く高杉に見つかってしまった。

 

あちゃー。

 

「お、高杉と武田が一緒なんて珍しいな。」

それでも、あからさまに嫌そうな顔をするのもなんだし・・・

そう思って、とりあえず平静を装って二人に近づいた。

 

「平野さん誘おうと思ったらおまえと一緒に出かけたって言ってたから、

 武田もあぶれたって言ってたし。」

 

「俺も琴美ちゃんと一緒に行きたかったのになー。」

そう言って高杉と武田は恨めしそうな顔で俺を見た。

 

「早い者勝ち。」

俺が二人に向かって言い放つと、

「一緒に店回ろうぜ。」

高杉の口からそんな言葉が出た。

 

「あ、それいい!二ノ宮はもう琴美ちゃんを充分独り占めしただろ?」

武田も高杉の提案に便乗しやがった。

 

「えー、やだ。」

 

そんなの絶対嫌に決まってんだろっ!

 

「嫌ならおまえは先に帰れよ。俺らは平野さんと一緒に回るから。」

俺が嫌だとハッキリ言うと、高杉もキッパリ言い放った。

 

む・・・。

 

「琴美はどうしたいんだ?」

高杉の言葉にかなーりムッと来たけど、

ここは琴美にまず聞いてみることにした。

だって、散々高杉と言い合って勝ったとして・・・

「あたし、高杉くんと行きたいっ!」なーんて、

あっさり言われたりなんかしたら立ち直れないもんな・・・。

 

 

「・・・そろそろ・・・帰ろうかな・・・と。」

少しの間があった後、琴美が小さな声で言った。

 

・・・よかった・・・。

 

俺はすごくホッとした。

 

「「えー。」」

高杉と武田が不満そうな声を上げた。

 

「・・・んじゃ、そーゆーコトだから。」

俺は高杉と武田が食い下がって来ないうちに・・・

というより、琴美の気が変わらないうちに再び手を繋いで歩き始めた。

 

 

高杉達の姿が見えなくなった頃、琴美の顔をチラ見してみた。

「武田はともかく、高杉と一緒にいたかったんじゃないのか?」

 

「なんで?」

 

「さっき、高杉のコト捜してたみたいだし。」

 

「・・・。」

 

黙り込んだと言う事は・・・図星か?

 

「一緒にいたかったら最初から宗とじゃなくて高杉くんと来るし。」

 

「・・・それもそうか。」

 

そうだよな・・・。

 

学校ならともかく、合宿先の地元のお祭りにはうるさい女子共なんていないんだし、

わざわざ琴美が遠慮して俺や高杉以外のヤツと行かなくてもいい。

まぁ、俺が高杉より先に琴美を誘ったからというのもあるんだろうけど。

 

 

―――翌日。

雨の音で目が覚めた。

窓の外を見るとものすごい土砂降りだった。

 

そういえば・・・琴美と出会った時もこんな風に

激しい雨が降ってたっけ・・・。

 

突然、雨が降り始めて・・・

突然、雷が鳴って・・・

そして、琴美に出会った・・・。

 

「二ノ宮、もう起きたのか?」

琴美と出会った時の事を思い出していると

隣で寝ていた武田も目を覚まし、体を起こした。

 

「なんか・・・雨の音で目が覚めた。」

俺がそう言うと「はは、俺も。」と武田は笑い、大きな欠伸をした。

そして、俺も釣られて欠伸をすると、

「あのさ・・・」と、武田は少し周りを気にして

みんながまだ寝ているのを確認すると

「もしかして・・・琴美ちゃんと付き合ってたりする?」

と、俺に囁いた。

 

「は?」

 

「いや・・・昨日も二人でお祭り行ったし。

 高杉が一緒にって言っても嫌がってたし。」

 

「・・・。」

 

「で?で?付き合ってんの?」

俺が黙ったままでいると武田は顔を覗き込みながら聞いてきた。

 

「・・・別に付き合ってはないけど。」

 

「ふーん。」

 

なんだよ、その顔は。

 

「・・・でも、好きなんだろ?琴美ちゃんの事。」

 

「・・・。」

 

「俺は・・・好きだ。」

 

「え・・・?」

俺はその言葉に驚き、思わず武田の顔をじっと見つめた。

 

「俺は琴美ちゃんの事、好きだよ。」

武田は俺から目を逸らす事無く言い切った。

 

俺だって・・・好きだ・・・。

 

「てか、高杉も琴美ちゃんの事、狙ってるっぽいけど。」

 

「高杉も?」

 

「うん、絶対“落とす”って言ってた。」

 

「・・・。」

 

なんだよ・・・それ。

 

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