First Kiss −First Love・14−

 

 

「あっ!琴美、オバケ屋敷あるよ?」

「え。」

琴美はオバケ屋敷が苦手らしく、俺が「入ってみようぜ。」と言うと、

思いっきり抵抗した。

 

けど、そこは所詮“女の子”。

力じゃ俺の方が上。

 

「大丈夫、大丈夫。俺がいるから怖くないって。」

俺がそう言って琴美を引っ張っていくと

「えーっ!」と、言いながら結局、琴美は俺と一緒に

オバケ屋敷に入った。

 

 

「・・・。」

すっかり黙り込んだ琴美はギュッと目を閉じていた。

俺は掴んでいた琴美の手首を離し、手を繋いだ。

すると、琴美は少しだけ顔を上げた。

「この方がいいだろ?」

 

「・・・うん。」

琴美はコクンと頷いた。

・・・と、言っても真っ暗だからよくわからないけれど。

少しでも琴美が怖がらないように・・・て、そもそも

こんなトコに連れ込んで怖がらせてる自体どうかと思うけど。

 

 

琴美と手を繋いだまま、ゆっくりとオバケ屋敷の中を進んでいくと

次々とオバケが襲い掛かってきた。

けど、そんなのは俺にとってまったくなんでもないモノで。

だって、作り物の生首とか、どのタイミングで

オバケが出てくるかとか大体わかっているし。

だけど琴美は一々全てに反応し、その度に悲鳴を上げていた。

 

ププッ。

可愛いっ!

 

 

そして、最後の部屋―――。

 

薄暗い灯りに照らされた琴美は涙目になっていた。

そんなだから最後の部屋の前で琴美はピタリと足を止めて

立ち止まってしまった。

 

「ほら、琴美いくよ。」

 

琴美は俺に促され、恐る恐る足を少し前に出した。

 

そして俺と琴美が最後の部屋の中に入ると、

突然ドアがバタンと大きな音を立てて閉まった。

 

「おぉっ!?」

まさか後ろでドアが閉まるとは思ってなかった。

さすがの俺もこれには驚いた。

琴美も今までで一番大きな声で悲鳴を上げ、

「もぉ・・・ヤダ・・・。」

と半ベソ状態で弱々しく呟いた。

 

まったく可愛いなぁ。

 

「ははは、後5m歩けば出口だよ。」

俺がそう言うと琴美はギュッと俺の腕にしっかりとしがみついた。

 

ちなみに琴美はオバケ屋敷に入ってからずっと

俺の腕にしがみついている。

 

オバケ屋敷はやっぱこうじゃないとっ。

 

出口まで後2m・・・。

そこまで進んだところで突然後ろからオバケが出てきた。

・・・で、琴美は案の定、泣き喚くような悲鳴を上げた。

 

 

逃げるようにオバケ屋敷から出て「琴美、大丈夫?」

と、俺が琴美の顔を覗き込むと

「うー・・・。」

と、琴美は半ベソと言うよりほとんど泣いてる状態だった。

 

「琴美がこんなに怖がりだとは思わなかった。

 やっぱオバケ屋敷はいいなぁー。」

 

「どこがー?」

琴美は涙目で俺を見上げた。

 

「だって、俺が何もしなくても琴美の方から抱きついてきてくれたし。」

俺がそう言うと琴美はハッとして絡ませていた腕を慌てて放した。

 

「別にそのままでいいのにー。」

 

「もしかして・・・その為にオバケ屋敷に入ろうって言ったの?」

琴美は半分呆れたような顔で言った。

 

「うん、当たり前じゃん。」

 

今頃気がついたのかー?

 

それから、琴美は「もう絶対、オバケ屋敷なんか入らないからっ!」

と、しばらく膨れっ面で言っていた。

 

そんなにイヤだったのか。

 

でも、俺は「はいはい。」と返事をしつつ、

絶対またいつか琴美とオバケ屋敷に入ろうと思っていた。

 

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