First Kiss −5−

 

 

5月、校外学習。

所謂、林間学校。

2泊3日のキャンプ生活を山の中でする。

 

今日のHRと一時限目はその日程説明とグループ分け。

だけど・・・なかなかグループが決まらない・・・

 

なぜ・・・

 

どーしてグループ分けがこんなに時間がかかっているか・・・

 

それは・・・

 

高杉くんと同じグループじゃなきゃヤダ。

 

二ノ宮くんと同じグループじゃなきゃヤダ。

 

・・・て女子全員が騒いでいるから。

あたしとメグちゃんを除いて。

男子の方はと言うと、特に誰と一緒じゃなきゃヤダ・・・とかはない。

 

 

結局、高杉くんと二ノ宮くんのグループの女子は

あみだで決める事になった。

黒板いっぱいに縦線を書いて一人一本横線を書き加えていく。

 

「ココまでやるとなんかの大イベントみたいだな。」

あたしの真後ろの席に座っている武田くんが頬杖をつきながら言った。

 

ホント・・・。

でも・・・女子にとっては大イベントなんだよ。

 

あたしとメグちゃんを除いて。

 

 

黒板にはなぜか、あたしとメグちゃんの分も縦線が引かれていた。

 

えー。

 

二ノ宮くんはともかく、高杉くんとは絶対一緒になりたくないからいらないのにー。

 

だけど結局、公平を期す為だとかなんとかで

あみだに参加されられた。

 

あたしとメグちゃんは正直どこでもいい。

一番最後に横線をテキトーに書き加えて

縦線の位置もテキトーに選んだ。

 

その結果・・・。

 

・・・。

 

神様はなんて意地悪なんだろう・・・。

残り物には福があるなんて絶対嘘だ・・・。

だって今のあたしにとっては残り物は最悪・・・。

 

高杉くんと同じグループって・・・。

 

メグちゃんはと言うと高杉くんのグループにも

二ノ宮くんのグループにもならなかったようだ。

いいな・・・。

 

あたし、メグちゃんとも離れるのか。

 

誰か代わってくれないかなー・・・。

 

「琴美、ちょっと。」

がっくり肩を落としたあたしのところにメグちゃんが来た。

 

「メグちゃん・・・」

 

慰めてー・・・。

あたしは涙目で無言の訴え。

 

「あたしと同じグループの安藤さんがね、

 どーしても高杉くんと一緒がいいんだって、代わってもらったら?」

メグちゃんはそうあたしに耳打ちした。

 

・・・へ?

 

「ホ、ホント・・・?」

 

「うん。」

メグちゃんはにっこり笑うと安藤さんに視線を移して手招きをした。

 

「「ホントにいいのっ?」」

あたしと安藤さんは同時に口を開いた。

 

「ホントに代わってくれる?」

あたしは安藤さんが女神様に見えてきた。

 

「あたしの方こそホントにいいの?」

安藤さんもあたしと同じ様な目をしている。

お互い女神様に見えているらしい。

 

そんなワケであたしは無事、メグちゃんと同じグループで

しかも高杉くんのグループにも入らずに済んだ。

 

めでたし、めでたし。

 

ちなみにさっき後ろでボヤいていた武田くんも同じグループ。

後は堀口くんと、菊池くん、それに浜田くん。

女子はあたしとメグちゃんだけ。

 

ホントは男子と女子3人ずつの6人グループだけど、

女子は高杉くんと二ノ宮くんのグループに多めに入ったので

こうなった。

 

 

そして、当日の朝・・・出発するまでがまた大変だった。

 

高杉くんと二ノ宮くんのグループに入れなかった女子達が

せめてバスの中だけでも隣に座らせろと騒いでいたから。

 

どーでもいいなぁ・・・。

 

あたしとメグちゃんは例によって前の方の席で担任の先生と男子に囲まれて

逆ハーレム状態。

 

今回は遠足の時みたいに小一時間の移動じゃなくて結構距離がある。

日程表によれば2時間30分の移動らしい。

どんだけ山奥に行く気だ?

 

出発して1時間半くらい経った頃、周りの男子はほとんど寝てしまった。

担任の先生も鼾をかいて寝ている。

 

隣にいるメグちゃんも最初の1時間はあたしとしゃべってたけど

今は小さな寝息を立ててすやすやと寝ていた。

 

後ろの席は・・・まだまだ元気。

 

でも・・・さすがに高杉くんも二ノ宮くんもちょっと疲れたみたい。

ずっとしゃべりっぱなしだもんね。

そうかと言って女の子達はまだまだ二人を眠らせてはくれないみたいだ。

 

あーぁ・・・かわいそ。

 

モテるのもつらいね。

 

そんなコトを思いながらあたしもうとうと・・・いつの間にか寝てしまった。

 

 

「・・・美。」

 

・・・ん?

 

「・・・琴美。」

 

メグちゃんの声。

 

「琴美、起きてー。」

 

あたしはメグちゃんの声で目が覚めた。

 

・・・あれ?

 

「着いたよ。」

メグちゃんにそう言われ、周りを見てみると

みんなバスから降り始めていた。

 

 

バスから降りて、グループ毎に固まって点呼。

先生の話がちょこっとあって、その後さっそく

グループ毎に分かれて昼食作り。

メニューはナポリタンと野菜スープ。

 

あたし達のグループの男子はわりと協力的で結構テキパキと動いてくれていた。

 

体育会系が多いから、合宿とかでこーゆーの慣れてるのかな?

こっちが一々言わなくても動いてくれている。

 

パスタが茹で上がってざるに移すときもあたしとメグちゃんの力じゃ

とても大きな鍋は持ち上がらないので男子がやってくれた。

 

他のグループはと言うと・・・

 

右隣のグループは、ざるに上げたパスタが固まって悪戦苦闘。

ちゃんとオイルを垂らしておかないからだよ。

 

さらに左隣のグループは女子に任せて男子が遊んでいるせいで

ちっとも進んでいない。

 

そーゆーのを見るとうちのグループの男子がいかに優しいかがわかる。

おかげで予定よりも早く出来上がった。

 

 

「うまいっ!」

武田くんはナポリタンを一口食べてにんまり笑った。

 

「うん、おいしいね。」

そう言って堀口くんもパクパク食べている。

 

「野菜スープってまだ残ってるの?」

浜田くんはよほどおなかがすいていたのかすでにスープを完食しそうだ。

 

「うん、まだ残ってるからおかわりできるよ。」

メグちゃんがそう言うと

「「「「やったーっ!!」」」」

と言って、男子達四人は喜んだ。

 

そこまで喜んでくれると作った甲斐がある。

 

「平野さんと藤村さんて料理上手いんだね。」

二杯目の野菜スープに手をつけながら菊池くんが言った。

 

「あたしはサポートしただけ。最終的な味付けは琴美がやったから。」

 

「みんなが協力してくれたから上手く出来たんだよ。」

 

「同じグループなんだし、みんなで協力するのは当たり前だろ?」

「そうそう、それに俺らそんなたいした事してないよ?」

武田くん達はにこにこしながら言った。

 

 

一足先に食べ始めたあたし達があと少しで完食する中、

周りのグループがやっと食べ始めた。

だけど高杉くんのグループと二ノ宮くんのグループだけが

まだ何かやっている。

 

他のグループより女の子が多いのが仇になって、

協力するどころか競うようにやっているみたいだ。

あれじゃ、完成するのはいつになるやら・・・。

 

 

武田くん達は昼食の後片付けも手伝ってくれた。

てっきり食い逃げのごとく、食べ終わったらさっさと

どこかへ遊びに行っちゃうかと思ってたのに。

 

現に他のグループの男子はそーゆーのが多いみたいだ。

 

このグループはかなり当たりかも。

あたしの女神様・安藤さんに感謝、感謝。

 

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