キューピッド・ゴブリン −6−

 

 

―――ブチッ・・・。

 

[Guild] Orli >> あ

 

釣りを始めて30分。

調子良く魚を釣り上げていた俺の釣竿の糸が切れた。

 

[Guild] Reia >> い、今の音は・・・(´∀`;

[Guild] Sho >> 釣り針持って行かれたっぽいね;

[Guild] Bunbun >> あちゃ><

[Guild] Aya >> 予備持ってきてる?

[Guild] Orli >> いや 一個しか持ってなかったから

[Guild] Reia >> じゃあ 作ってあげる(´∀`)

 

レイアはそう言うと釣り針をその場で合成してくれた。

 

[Guild] Orli >> ありがとう^^

[Guild] Reia >> 失くしたらまた作ってあげるね(´∀`)

[Guild] Orli >> 材料持ち歩いてるの?

[Guild] Reia >> うん 釣りに行く時はね(´∀`)

[Guild] Ryuka >> 釣り針を何個も持ってたらインベントリが

いっぱいになるからね^^

[Guild] Orli >> あー なるほど^^

 

それから俺は3回も釣り針を失くし、その度にレイアが合成してくれた。

 

ここのギルドのメンバーはみんな良い人だ。

リーダーを筆頭にみんながいろんな事を教えてくれるし、助けてくれる。

釣竿と釣り針も貰っちゃったし、何かお礼をしたかったけれど

「それはまた今度、新しい人が入ってきたら同じ様に助けてあげて。」

と、ギルドマスターのショウさんに言われた。

 

“男”だね。

 

 

―――翌日。

3時限目の体育の時間、今日はフォークダンス。

約一週間後にある体育祭の最後にあるプログラムに

生徒全員参加のフォークダンスがあって、今日はその練習だ。

 

基本は男子と女子のペア。

しかし、うちのクラスは男子の方が多い。

その為、男同士で踊るという残念なペアが一組出来た。

・・・といっても、一踊りで次の子とチェンジするから

ずっと男同士で踊るワケじゃないけれど。

 

そして、チェンジを繰り返す事数回。

俺は成瀬さんとペアになった。

成瀬さんは手を繋ぐのが恥ずかしいのか

俺が手を差し出すと少し躊躇いながら掌を重ねた。

しかも、彼女は背が低いから顔を上げてくれない限り

俺とは目も合わない。

もちろん、会話なんてあるはずもなく・・・。

 

気まずっ。

 

何か話した方がいいのかな?

 

・・・かと言って、成瀬さんと話せそうな話題が

見つからない。

 

「痛っ。」

すると、成瀬さんの足が止まった。

 

あ。

 

「ご、ごめんっ。」

 

やってもーた・・・。

 

考えながら踊っていた所為で俺は成瀬さんの足を踏んでしまっていた。

 

「大丈夫?ホント、ごめん。」

 

「うん、大丈夫。」

そこでちょうどチェンジとなり、

成瀬さんは苦笑いしながら俺と手を離した。

 

その後、しばらく俺は成瀬さんの姿を目で追った。

幸いにも思いっきり踏んではいなかったらしく、

痛そうな顔もしていないし、足も普通に動かしていた。

 

 

―――昼休憩。

教室で大山と喋っていると成瀬さんの姿が目に入った。

 

杉田さんと徳永さんが片手にブラシを持ち、

成瀬さんの髪を弄り回している。

 

成瀬さんの髪は長くて綺麗なストレートだ。

しかも可愛いからどんな髪形も良く似合う。

だからあの二人によくいろんな髪型にされて遊ばれている。

この間はカーラーの替わりにティッシュを使って

緩いウェーブにされていた。

今日はおだんごらしい。

そして昼休憩以降、成瀬さんはおだんごのまま

授業を受けていた。

 

 

成瀬さんて、項もきれいだなぁー。

 

俺は授業を受けながら真ん丸いおだんご頭の成瀬さんの

項を見つめていた。

すると、授業が終わって大山はくるりと俺の方に振り向くと

「なんか、すっげぇ視線感じたんだけど。」

と言った。

 

別におまえを見つめていたわけじゃねぇっ。

 

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