キューピッド・ゴブリン −30−

 

 

――翌日。

 

昨夜はライアがゲームにインしてくるのが遅かったから

今夜、改めてまた三人で集まってソロのクエストをやる事になった。

 

[Party] Orli >> そういえば、ライア

[Party] Raia >> うん?

[Party] Orli >> 彼女はこのゲームやってないの?

[Party] Raia >> うーん、やりたくても自分専用のパソコンがないから

できないんだよ

[Party] Orli >> そっかー、一緒に出来たらいいのにな? そしたら

俺にわざわざ結婚してくれなんて言わなくてもいいし^^

[Party] Raia >> そうなんだよなー(´д`) オーリーは彼女いないの?

[Party] Orli >> いないよ^^

[Party] Raia >> レイアちゃんは? 彼氏いるの?

[Party] Reia >> いないよー(´∀`)

 

(へぇー、成瀬さん、彼氏いないんだ?)

 

ちょっと意外だった。

 

てゆーか、そもそもいたら毎晩ゲームにログインして来ないだろう。

ライアは時々ゲームにログインしない事もあるから、

彼女とデートとか電話でもしているんだろうけれど。

 

[Party] Raia >> じゃあ、オーリーとレイアちゃんマジで結婚すればいいのに

[Party] Orli >> 俺だけその気でも^^;

[Party] Raia >> レイアちゃん嫌なの?

[Party] Reia >> そんな事ないよ(´∀`)

 

(え……)

 

[Party] Raia >> じゃあ、思い切って結婚しちゃえー(´∀`)ノ

 

(成瀬さん、マジ?)

 

……いや、きっと社交辞令だな。

 

[Party] Orli >> そんな事言ったら、俺、本気にしちゃうよー?(*´Д`*)

[Party] Raia >> してしてーん♪(*´Д`*)

[Party] Orli >> ライアに言われてもなぁー(´д`)

[Party] Reia >> (´∀`)

 

レイアはそれ以上の反応はしなかった。

そりゃそうだ。

こんな会話、あの成瀬さんがさらりと聞き流せるはずがない。

 

という訳で俺はちょっと無理矢理に話題変換してその場を誤魔化した――。

 

 

 

 

「なぁ、大山」

「んぁ?」

「俺、結婚しようと思ってるんだけど……」

「はぁっ!?」

翌朝、いつものように俺の目の前でコーヒー牛乳を飲んでいる大山に言ってみた。

案の定、驚いている。

 

「け、け、けけけ、結婚って、おまえ……」

 

「て、言ってもゲームの中の話なんだけど」

 

「なんだよ、ゲームの話か脅かすなよ。

 んで? それってもちろんレイアちゃんとだよな?」

 

「うん」

 

「レイアちゃんにはもう話したのか?」

 

「話したって言うかー、話の流れでそんな雰囲気になったと言うか?」

 

「ふーん、じゃ、レイアちゃんもまんざらでもないんだ?」

 

「うーん、多分」

 

「多分て、おまえ……」

 

「それがよくわかんねぇんだよなー」

 

「んー、確かああいうゲームって“結婚”はできても

 “離婚”できない場合が多いからなー。

 おまえが本気でその“結婚”を考えてるなら、

 レイアちゃんの気持ちを確かめてみたら?

 いくらゲームって言ったって相手が嫌がってたら

 楽しくなくなるしな」

 

「だよなー……」

溜め息をつきながら頬杖をつくと、大山の肩越しに成瀬さんが見えた。

 

(相変わらず可愛いなー)

 

しかし、いざ“結婚”となると俺だけ相手の正体を知っているというのは

どうなんだろう?

レイアはオーリーの正体を知らない。

でも、俺はレイアの正体を知っている。

 

なんか、それってズルい気もするけれど……。

 

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