Calling 第42話 大人な彼女 -1-

 

 

――三日後。

U大学の合格通知が家に届いた。

 

その日の夜、両親と俺とで家族会議。

議題はもちろん、大学の事だ。

 

……とは言え、本命だったU大学に合格した今、話し合う事と言えば、

『U大学に通うにはどうするか?』の一つだけ。

家からU大学までは電車で片道三時間弱。

頑張って家から通ったとしても往復で六時間もかかる。

そんな訳で自ずと実家を出て一人暮らしという事に決定した――。

 

 

     ◆  ◆  ◆

 

 

――翌日、昼休憩。

 

「先輩、どうしたんですか? どこか具合でも悪いんですか?」

鈴はすぐに俺の様子がおかしい事に気が付いた。

 

「いや、大丈夫……」

 

「……」

そう答えても鈴は黙ったまま心配そうな顔をしていた。

 

(鈴にちゃんと言わなきゃ……)

でも、言ったら鈴はなんて言うかな?

何ヶ月も会えない程遠距離ではないにしろ、今までみたいに

会いたい時にすぐ会えるわけじゃない。

もしかしたら、俺とはもう付き合えないと言うかもしれない。

 

「……鈴」

それでも、言わなきゃ……。

 

「はい」

 

「俺、四月から一人暮らしする事になったんだ」

 

「そう、ですか」

鈴は意外に驚く様子もなかった。

 

「大学まで通うのに実家からだと片道三時間くらい掛かるから……」

 

「……」

 

「だから、もしかしたら……いや、多分毎週会えないと思う」

 

「……はい」

 

「ごめん……今まで、ちゃんと言わなくて……」

 

「……」

鈴はやっぱり怒っているのか黙っていた。

 

 

しかし、しばらくの沈黙の後、

「なんとなく、そういう事になるんじゃないかなって思ってました」

と言った。

 

(……っ?)

 

「先輩が受ける大学の事、実はちょっとだけ調べてみたんです。

 そしたら、通うのに三時間くらい掛かるってわかって……だからきっと

 合格したら大学の近くで一人暮らしする事になるのかなー? って、思ってました」

 

「……そっか」

鈴はわかっていた。

わかってて俺が第一志望の大学に合格出来るようにって応援してくれていたんだ。

 

(鈴……ごめんな。でも、俺、鈴とは別れたくない……っ)

 

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