Calling 第19話 個人授業 -3-
それから和泉沢先輩は、送られてきたメールへの返信や着メロのダウンロードのやり方とか
待受画面の設定、目覚まし時計の設定、後は写メの使い方まで全部丁寧に教えてくれた。
そして気が付くと、かなりの時間が経っていて、結局いつもの帰宅時間と
変わらない時間になっていた。
「先輩、すみませんでした。こんな遅くまで、ありがとうございました」
「もう携帯の使い方はバッチリ?」
「はい」
「じゃ、今日の宿題。家に帰って寝る前に俺にメール」
和泉沢先輩はそう言うとにやりと笑った。
ちょっとびっくりした。
「わかりました、先生っ」
まさかそんな“宿題”が出されるなんて思ってなかった。
でも、これで先輩にメールする口実ができた。
◆ ◆ ◆
――夜。
約束通り、私は寝る前に和泉沢先輩にメールを送った。
もちろんタイトルは“先生、宿題です”。
−−−−−
こんばんは。
今日は本当に
ありがとうございました。
せっかくの勉強の時間を
邪魔をしてしまって
すみませんでした。
m(_ _)m
先輩のおかげで携帯
使いこなせそうです。
おやすみなさい。
鈴
−−−−−
これだけのメールを打つのに三十分掛かった。
メールを打つ事に慣れていないのと、後は何をどんな風に伝えればいいのかわからなかったから。
自分でも下手クソなメールだな……と思いつつ、これ以上遅くなると先輩も寝てしまうと思い、
とりあえず送った。
すると、すぐに返事が返ってきた。
−−−−−
上出来!
なかなか優秀な生徒だよ。
またわからなくなったら、
いつでも聞きにおいで。
おやすみ。
Daichi
−−−−−
和泉沢先輩から返って来たメールを私はすぐにプロテクトした。
消えてしまわないように……――。
◆ ◆ ◆
――翌日。
今日は終業式。
昨日とは打って変わって晴れた。
俗に言う“ピーカン”だ。
空を見上げると、とてもきれいな青空が広がっていた。
……チャリラリラ〜ン……
私は思わず写メを撮り、そして撮った画像を待受画面にした。
先輩の“個人授業”がなかったらきっとこんな事もまだまだ出来なかっただろう――。