First Kiss −First Love・8−

 

 

―――6月のある日。

 

今日は約二週間後にある体育祭の種目毎の出場者を決める日だ。

一人最低一種目。

 

琴美と一緒に出られそうな種目は・・・

・・・あったっ。

 

『男女混合リレー』

 

あとは・・・

 

『二人三脚』

男女ペアの二組選出。

 

二組かー・・・競争率高そうだな。

 

それからー・・・

うーん・・・これだけか。

 

琴美は何に出る気なんだろ?

 

俺はテキトーに男子リレーや騎馬戦に出る事にして

後は琴美が何に出るのか様子を伺っていた。

 

だけど、琴美はなかなか立候補しない。

 

 

そして、次の種目は『男女混合リレー』。

 

あれ?

琴美、また手挙げてない。

 

ずっと立候補していないから琴美はまだ一種目も決まっていないはずだ。

これで手を挙げていないという事は残る種目はあと一つ。

 

『二人三脚』だ。

・・・てコトはー・・・俺がここで立候補しなくても

次で必ず琴美は出なくちゃいけなくなる。

 

あの“約束”を発動させたら間違いなく俺の相手は琴美になるワケだ。

 

 

―――いよいよ『二人三脚』の出場者を決める時、

進行役の体育委員・小宮が

「じゃ、最後。二人三脚に出場したい人、挙手してください。」

と言った瞬間、俺は一番に手を挙げた。

 

・・・て、琴美挙げてないじゃんっ!?

 

琴美に視線を移した俺はびっくりした。

てっきり挙手していると思っていた琴美が手を挙げていなかったからだ。

 

なんとか琴美に挙手させる方法はないかな・・・?

 

すると、小宮が琴美の出場種目がまだ一種目も決まっていない事に気がついた。

「平野さん、まだ一種目も決まってないよね?これ出ない?」

 

おおぉっ!

小宮・・・ナイス!

 

琴美は少しギクリとした顔をして

「・・・あ、じゃ・・・出る・・・。」

と、渋々手を挙げた。

 

よっしゃーーーーっっ!!

 

琴美がようやく手を挙げ、女子の候補者は10人になった。

男子は俺と堀口しか手を挙げていない。

 

「えーと、じゃ二組選出するから・・・男子はこのまま

 二ノ宮と堀口にお願い。」

 

よしよし・・・じゃ、後はいかに堀口に琴美を

取られないようにするかだな・・・。

 

なんてコトを考えていると突然、女子共が

「じゃあ、私も出る!」と一斉に挙手を始めた。

 

なにぃーーーっ!?

冗談じゃねぇ・・・マズい・・・このままじゃ・・・

 

「今さら挙手してもダメ。平野さんはこれ以外に出る予定ないから

 確定ね。後は最初に挙手してた女子の中から決めるから。」

小宮はまるで女子共がそう言い出すのがわかっていたかのように

冷たく言い放った。

 

おー、小宮・・・やるなぁ。

 

ふふふ・・・さて、もう邪魔は入らなそうだし、

あの“約束”発動させちゃおっかなー。

 

琴美の方に視線をやると目が合った。

すると琴美は少し慌てて目を逸らした。

 

目を逸らしてもダメですよー。

 

立候補した女子共は俺のペアの相手を何で決めるか話し始めた。

 

そんなの決めなくても俺が琴美を指名するんだから無駄なのに・・・。

 

「俺が指名しちゃダメ?」

ごちゃごちゃ言ってる女子共を他所に俺は小宮に提案した。

小宮は女子共にうんざりしてるからきっといいって言うはず。

 

「いいよ、むしろその方が早い。女子もそれでいいね?」

案の定、小宮はあっさり俺の意見を聞き入れた。

 

“女子もそれでいいね?”と疑問形で言ったにも拘らず、

その顔は有無を言わさぬ顔で。

女子共はそれに反論も出来ず、納得したようだ。

 

「言っておくけど、指名された人は拒否権なしね?」

俺は少し俯いている琴美に向けて言った。

 

“候補者の女子”共はコクコクと首を縦に振った。

琴美はまだ俯いたままだ。

 

俯いててもダメですよー。

 

「じゃ、琴美。」

俺がそう言った瞬間、“候補者の女子”共の悲鳴が響いた。

 

「・・・え、えーと・・・、あたし・・・堀口く・・・」

「拒否権なし。」

琴美が口をパクパクさせながら小さな声で言おうとした事を

俺はシャットアウトするべく言い放った。

 

「じゃ、二ノ宮の相手は平野さんでいいね?」

そして、小宮にまでそう言われ、琴美はとうとう首を縦に振った。

 

よっしゃーーーーーーっっ!!!

 

俺が心に中で歓喜の雄叫びをあげているとなにやら視線を感じて

その方向に顔を向けると琴美がちょっと涙目で俺を睨みつけていた。

 

あらまー、そんな可愛い顔で睨んじゃって。

約束忘れたのかなぁー?

 

俺がにやりと笑うと琴美は無言で俯いた。

 

 

―――体育祭当日。

二人三脚しか出ない琴美は朝からずっと応援をしていた。

特に高杉には目立った応援はしないもののじっと見つめている。

 

なんか、おもしろくねぇ・・・。

 

 

そして、次はいよいよ二人三脚。

俺が琴美の所に行くと琴美は誰かを目で追っていた。

 

視線の先には・・・

 

やっぱり高杉の姿があった。

 

「・・・琴美。」

高杉を見つめたままの琴美に俺は声を掛けた。

でも、俺の声にはまったく気がつかないのか

ぼーっとしたままだ。

 

「琴美。」

今度は少し大きな声で呼んでみた。

それでも琴美は気がつかない。

 

「琴美!」

なんだかムカついて思わず琴美のおでこを指で軽く小突いた。

すると琴美はやっと俺に気付いたのか「・・・あ・・・何?」

と、ポカンと口を開けた。

 

「何?じゃねぇよ。二人三脚、

 次だからそろそろ準備しとかないと。」

 

「・・・あ、うん。」

琴美はおでこを擦りながら返事をした。

 

・・・琴美・・・

高杉の事が気になるのかな・・・?

 

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