First Kiss −First Love・7−

 

 

―――週明け、月曜日。

 

今日はちょっと特別な日。

・・・と言うのは、俺の誕生日だからだ。

まぁ、これと言って何もない日だけど、

学校に行けば琴美の顔が見られる。

 

 

そして放課後―――。

部活が終わり、正門を出て駅に向かって歩いていると

後ろから誰かに呼び止められた。

 

「宗。」

少し躊躇したような女の子の声。

 

・・・琴美?

 

俺が振り返って見ると琴美が小走りで近づいてきた。

 

「今日も遅くまでやってたんだね。」

 

でも、そのおかげで会えたけど。

 

「・・・うん。・・・宗、いつもこの時間までやってるの?」

「うん。」

「よく体力続くね。」

「まぁ、中学の時からやってるからね。」

「そーなんだ。」

「琴美はずっと美術部?」

「うん。・・・あたし美術部って言ったっけ?」

「いや、聞いてないけど、武田が言ってたから。」

この間、琴美は美術部らしいと武田が言っていた。

つーか、武田は琴美と基本的に仲が良い。

 

「武田と仲良いんだね。」

「真後ろの席だから。」

「そーゆー問題?」

「うん。」

 

て、事は俺も琴美の近くの席ならもっと早く仲良くなれてたのかな?

 

そんな事を思っていると

「・・・あ、そうだ。コレ・・・」

と、琴美が何かを俺に差し出した。

 

なんだろう・・・?

 

「クッキー。」

すると琴美はクスっと笑いながら言った。

 

「マジッ!?」

「マジ。」

「やったーっ!!」

俺は思わず叫んだ。

 

「ありがと!最高の誕生日プレゼント!」

まさか琴美がクッキーを作って来てくれるとは思ってもみなかった。

しかも、今日は俺の誕生日・・・今までで一番嬉しい誕生日プレゼントかも。

 

琴美は俺が今日、誕生日だと言うと

「だったら、もっと豪華なお菓子にすればよかった。」

と言った。

 

「でも、コレ俺の為に焼いてくれたんでしょ?」

 

「うん。」

 

最初は家でもよく作ってるって言ってたから、

ついでに作ったのかとも思った。

でも、琴美はハッキリ“俺の為に・・・”と言う言葉に頷いた。

それが何よりも嬉しい。

 

 

―――家に着いて、さっそく琴美から貰ったクッキーを開けた。

袋を閉じてあるリボンを解くと中からいい香りがした。

バターの香りと・・・後は紅茶・・・?

 

よく見るとクッキーには紅茶の茶葉が練りこんであった。

紅茶クッキーみたいだ。

 

晩メシの前だけど・・・ちょっと味見。

 

クッキーを一つ取って口に入れるとサクッと音がした。

 

んー、うまいっ。

 

武田が言ってた通り、いくらでも食べれそうだった。

 

 

―――翌日。

俺は朝からずっと琴美に話しかける機会を伺っていた。

昨日のクッキーのお礼が言いたかったから。

 

でも、俺の周りには女子共がいるし・・・。

わざわざ琴美に近づくと騒ぐだろうしなぁ・・・

 

ここは部活が終わってから待ち伏せでもするか?

てか、逆にその方が二人でゆっくり話せるからいいか。

 

そう思った俺は放課後、琴美を待ち伏せする事にした。

 

 

そして部活が終わった後、俺は正門で琴美を待つことにした。

さっき昇降口の下駄箱を確認しに行ったらまだ琴美の靴があったから

きっと部活をしているはず。

 

 

待つこと20分―――。

校舎の方から薄っすらとだけど琴美が近づいてくるのが見えた。

 

・・・来たっ。

 

「遅かったね。」

俺がそう言うと琴美はキョトンとした顔で俺を見上げ、

そしてキョロキョロと周りを見渡し始めた。

 

まさか、自分を待っていたとは思ってなかったのか?

 

「琴美の事、待ってたんだよ。」

 

「・・・な、なんで?」

 

「昨日のクッキーのお礼が言いたかったから。」

 

「べ、別によかったのに・・・。」

 

「どうしても直接言いたかったし・・・かといって、

 教室で言うと女子が騒ぐと思って。

 あのクッキーすごくおいかったよ。ありがとう。」

 

「・・・あの場所・・・教えてくれたお礼だし。」

 

例の二人だけの秘密の場所の事か・・・。

 

 

それから、俺と琴美は昨日と同じ様に二人で駅に向かって

いろいろ話をしながら歩いた。

 

・・・ところで・・・

 

「・・・そういえば・・・琴美・・・最初、

 高杉と同じグループにならなかったっけ?

 なんで変わったんだ?」

俺がそう聞くと琴美は俺から少しだけ視線を外した。

 

「アイツのコト、嫌いなの?」

 

「別に・・・嫌いじゃないよ。

 ・・・変わって欲しいって言われたから。」

 

「それであっさり変わっちゃったんだ?」

 

「うん。」

 

それでか。

 

「じゃ、もし俺と同じグループになって、誰かに変わってくれって

 言われてたら変わってた?」

 

「うん。」

 

なぬー。

 

「えー、それじゃ今度またこーゆーグループ分けとかあっても

 琴美と一緒になれる確率超低いじゃん。」

 

「宗も競争率高いもんね?」

琴美はクスッと笑った。

 

「じゃあ俺が琴美を指名するとしたら?」

 

「んー・・・。」

 

「それでも断る?」

 

「んー・・・断る理由がなかったら断らない。」

 

まぢか?

 

「絶対?」

 

「・・・う、うん。」

 

「おっし!その言葉忘れんなよ?」

 

うひひ・・・もうすぐ体育祭・・・

 

「約束な?」

 

「う、うん。」

 

俺が念を押すと琴美は少し戸惑いながら返事をした。

 

よしよしよし・・・っ。

 

「破ったら俺とキス。」

そこまで言うとさすがに琴美は「はぁっ!?」と言った顔になった。

 

「破らなきゃいいんだしー。」

 

プププ・・・ッ、1ヵ月後の体育祭が楽しみだ。

 

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