First Kiss −First Love・4−

 

 

―――5月。

そろそろクラス全員とも仲良くなり始めた頃、

今日のHRと1時限目は校外学習の日程説明とグループ分けに費やされた。

 

例のごとく、平野さんと藤村さん以外の女子共が

俺と一緒のグループがいいとか

高杉と一緒のグループがいいとか

騒ぎまくっているもんだから決まるものも決まらないでいる。

 

俺は平野さんと一緒がいいなー。

 

だけど、神様は意地悪なのか・・・

女子全員参加でやったあみだくじで平野さんは高杉と同じグループになった。

 

いいなぁ・・・高杉。

 

俺のグループはと言うと・・・いつも周りで騒いでいる女子共だ。

しかもなぜか他のグループより女子が多いし。

なんだか溜め息が出てきた・・・。

 

 

―――そして、当日の朝。

平野さんの近くに座ろうとした俺の邪魔をしたのはまたしても

女子共だった。

 

平野さんと同じグループになれなかったんだから

せめてバスの中だけでも近くに座りたかったのに・・・。

 

・・・で、出発して1時間半・・・ずっと喋りっ放しの女子共は

まだ喋り倒していた。

 

そろそろ寝かせてくれー。

 

小さくため息をつきながら前の方を見ると、ほとんどの男子は寝ているし、

平野さんと藤村さんも起きている様子もない。

 

・・・俺も寝たい・・・。

 

 

結局、2時間30分の道のりを俺はずっとおしゃべりに付き合わされた。

そしてやっとのことでバスは校外学習が行われる山の中の施設に到着した。

 

バスから下りる時、平野さんの方をちらっと見ると

藤村さんが起こしていた。

「琴美、起きてー。」

藤村さんの声に反応してゆっくりと目を開けた平野さんは

なんだかボーッとしてる顔がまた可愛らしかった。

 

 

バスを下りてさっそく点呼。

先生の話の後はグループ毎に分かれて昼食作り。

俺は高杉のグループの方へ視線をやった。

 

・・・あれ?

平野さんがいない。

 

周りを見回して平野さんの姿を捜すと、高杉と同じグループになったはずの

平野さんはなぜか武田と同じグループにいた。

藤村さんも一緒だ。

 

なんで?

 

少し不思議に思いながら昼食の準備を進めてながら目で追っていると

平野さんと藤村さんは手際良く動いていた。

それに比べてうちのグループの女子共は・・・

 

何やってんだ?

 

しはらく様子を見ているとどうやら一人は包丁も握れないらしく、

そしてもう一人はスープの作り方がわからず、

さらには野菜の切り方もよくわかっていない。

まぁ、切り方なんてぶっちゃけどうでもいいが・・・

食べられる物さえ出来ればいい・・・。

 

俺達があーでもない、こーでもないと言いながら

もたもたしている中、平野さん達はすでにもう食べ始めていた。

 

早っ!?

 

つーか、俺らが遅いのか。

 

ようやく俺達が食べ始めた頃には平野さんのグループはすでに後片付けをしていた。

楽しそうに武田達と一緒に鍋や皿を洗っている。

 

うちのグループはと言うと・・・

 

険悪だ・・・。

 

時間がかかったワリに出来上がった料理がマズいからなおさらだ。

普通に作れば問題なくできるはずなのに・・・なぜこんなにもマズいんだ?

 

それでも食べないワケにもいかず、とりあえずはノルマ分はなんとか完食した。

 

 

―――昼食の後はオリエンテーリング。

 

あぁ・・・正直もうどうでもいい・・・。

 

平野さんと同じグループになれなかった上、

ろくに料理もまともにできない女子共にうんざりし、

すっかりやる気をなくした。

ちなみに唯一、同じグループの男子・池内もげんなりしている。

 

そんなんだから、上位20位なんかに入れるはずもなく、

俺達のグループは全78グループ中、76位と非常にビミョーな順位でゴールした。

なにが微妙って・・・最下位ならそれはそれでいいけど

76位って・・・ブーヒー賞にも入らない。

 

平野さん達はと言うとどうやら20位以内に入ったらしく、

武田達と景品を手に楽しそうに笑っていた。

 

 

―――夕方。

今度は夕食作り。

メニューはカレーとマカロニサラダだから普通に考えてもまず失敗はない。

 

・・・と、思ったら・・・甘かった・・・。

カレーのルーはまともに出来たものの、ご飯は固いし、

マカロニも湯で加減がいまいち芯が残った状態だ。

 

おいおい・・・アルデンテはパスタだけにしろよー。

 

 

結局、カレーライスは一杯目だけはなんとかご飯と一緒に食べた。

けど、二杯目からはひたすらルーだけ。

そんなワケでルーだけではやっぱり満腹にならなかった俺は

中途半端な晩メシの後、なぜかおにぎりを持っている武田に出くわした。

 

「武田、なんでおにぎりなんか持ってんだ?」

 

「あ、これ?平野さんと藤村さんが作ってくれた。」

 

何っ!?

 

「半端に余ったご飯を高菜おにぎりにしてくれたんだ。」

武田はそう言うとにんまりと笑った。

 

「それ半分くれっ!」

 

「はぁっ!?」

 

「俺らンとこのご飯・・・とても食えるモンじゃなかったんだよー。」

 

「なんだ、それ?」

 

「何をどう間違えたのか、ご飯が固くてさー・・・だから、頼むっ。」

 

「えー、しょうがねぇなー・・・。」

武田はそう言うと高菜おにぎりを半分俺に分けてくれた。

 

救いの神・武田に感謝、感謝。

 

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