First Kiss −First Love・2−

 

 

―――HRが終わった後。

さっそく俺は男子バスケット部の顧問・岡嶋先生の所へ向かった。

もちろん入部する為。

 

職員室に入って岡嶋先生の姿を探すと、

ちょうど俺の担任の先生と話をしていた。

 

「岡嶋先生。」

ゲラゲラ笑って雑談しているみたいだから、

大事な話をしているワケでもなさそうだ。

とりあえず声を掛けてみた。

 

「ん?」

「おぅ、二ノ宮。」

俺の声に二人が同時に振り向いた。

 

「岡嶋先生、男子バスケ部の顧問ですよね?」

 

「あぁ、そうだけど?」

 

「俺、入部したいっす。」

 

「お、大歓迎。」

岡嶋先生はニヤッと笑い、「じゃ、とりあえずクラスと名前、教えてくれ。」

と言った。

 

「1年3組の二ノ宮宗です。」

「1年3組?・・・んじゃ、先生のクラス?」

岡嶋先生は目の前にいる担任の先生に視線をやった。

 

「そうそう、俺のクラス。可愛がってやってね。」

 

「へぇー、結構背高いけど中学の時は何やってたんだ?」

 

「中学もバスケっす。」

 

「ポジションはどこだった?」

 

「主にセンターやってました。」

 

「ふーん・・・じゃ、センター以外でやってみたい所はある?」

 

「んー・・・センターも元々自分で希望してやってた訳じゃないですし、

 特にここじゃないと嫌だとかもないし・・・今はどこでもやってみたいっす。」

 

「そうか・・・まぁ、いろいろやってみるのもいいな。」

 

「はい。」

 

「ところで、二ノ宮はハーフか・・・?」

 

「ですっ。」

 

「ほー、男子バスケ部にもいよいよ“イケメンアイドル”が入部するのかー。」

 

「なんすか・・・?それ。」

 

「野球とかサッカーと違ってバスケはいまいち人気が薄いからな。

 お前みたいなのが入ってくれると試合の時に女子が応援に来てくれるだろ?」

 

「・・・。」

 

まったく・・・この先生は何考えてんだか・・・。

 

「確かにクラスの中でもさっそく人気を集めてるしな?」

担任の先生は俺をちらりと見るとにやりと笑った。

 

「えー、そんな事ないっすよ。」

 

「とかなんとか言って、選択授業ほとんどの女子が音楽を選択したぞ?」

担任の先生はそう言うと俺に選択授業のリストを見せた。

 

「えー。」

確かに俺が選択授業は音楽にするって言ってたら周りの女子は

「じゃあ、私もっ。」とか騒いでたけど・・・ホントに音楽にしたのか・・・。

 

ちなみに選択授業は音楽か美術のどちらかを選択する。

例の“イケメン高杉”も音楽にしたらしく、

高杉派の女子はみんな音楽にしたらしい。

 

「まぁ、平野さんと藤村さんだけは美術にするみたいだけど。」

 

「へぇー、そうなんすか。」

 

あの二人、美術にしたんだ・・・。

 

 

―――数日後、木曜日の放課後。

部活に行く前、職員室に向かっていると

ちょうど担任の先生が職員室から出てきた。

 

「先生。」

俺はどこかへ向かおうとしている担任を呼び止めて近づいた。

 

「おぅ、どうした?」

 

「選択授業の変更ってまだ間に合います?」

 

「なんだ変えたいのか?」

 

「はい。」

 

「ギリギリセーフだったな。ちょうど今から音楽の先生と

 美術の先生のところへリストを渡しに行くところだったんだ。」

 

「うわっ、あぶなかったー。」

 

「確かおまえは・・・音楽の方を選択してたよな?」

 

「はい、それを美術の方に変えたいっす。」

 

「はは、気が変わったのか?まぁいい・・・それじゃ、

 美術の方で提出しとくから。」

担任の先生はそう言うとその場で音楽のリストにある俺の名前のところに横線を引いた。

そして美術のリストの一番下に俺の名前を書き加えた。

 

 

―――翌日。

6時限目と7時限目。

俺達のクラスは金曜日のこの時間に選択授業がある。

5時限目が終わって美術室に移動しようと筆記用具を出していると

「ソウ君、音楽室一緒に行こうよ。」

と、数人の女子が声を掛けてきた。

 

ちなみに俺は“ソウ”じゃなくて“シュウ”だけど・・・

どうでもいい女の子からはどう呼ばれようが気にしないし、

わざわざ訂正するのも面倒臭いからいつも聞き流している。

 

「あ、俺、選択授業は美術に変えたから。」

 

「えーーーーっ!?」

「うそぉ〜っ?」

「なんでー?」

「黙って変えるなんてひどーいっ!」

数人の女子共は口々に好きな事を言い始めた。

 

そんな事いわれてもなぁ・・・元々、一緒にしようって

約束したワケじゃないし。

 

「んじゃ、そういう事だから。」

俺はブツブツと文句を言っている女子達を置いて美術室に向かった。

 

俺が美術に変えた理由・・・

 

それは・・・

 

平野さんが気になったから。

 

あの瞳、どこかで・・・どこだったかな・・・?

 

平野さんにもっと近づけばわかるかもしれないと思った。

だけど俺がまた美術に変えたと言えばまた女子共がくっついてくるかもしれない。

そうなると平野さんと話す切欠もタイミングもまるでなくなってしまう。

だから、昨日こっそり変えたんだ。

 

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