First Kiss　−First Love・27−

「あー、やっと来た！」

多目的ホールの控室に入るなり、琴美は水本先輩と

秋川先輩に捕まった。

ちなみにこの秋川先輩も美術部でこのコンテストに出る。

美術部は美女の宝庫だな・・・。

琴美は二人に囲まれると人形のごとくされるがままになった。

その様子を姉川先輩はククッと笑いを堪えながら見ていた。

そして、2時前―――。

開始時間ギリギリ。

「きゃーっ！琴美ちゃん、思った通りすっごく可愛い！」

「大成功！」

水本先輩と秋川先輩のその声が琴美のメイクの完成を告げた。

すげぇ・・・可愛い。

ウィッグをつけ、眼鏡を外した琴美は

初めて会ったあの日に戻ったみたいだった。

「出場者の皆さん、そろそろステージに出てくださーい！」

学園祭実行委員の男子生徒の声がした。

たげと琴美はみんなが控室を出て行く中、動けないでいた。

あ、そうか。

眼鏡がないと歩けないんだったな。

「手、繋いでたら歩けるだろ？」

俺は琴美と手を繋いだ。

すると、琴美は少し不安そうな顔で俺を見上げながら

「宗・・・？」と言った。

「うん。」

俺がそう返事をすると琴美は安心したように笑みを浮かべた。

「琴美ちゃん、もしかして眼鏡なしじゃ歩けないの？」

「それじゃ、ランウェイ歩けなくない？」

その様子をみていた水本先輩と秋川先輩が心配そうに言った。

コンテストの一番の見せ場、アピールタイムは

20mのランウェイを歩く事になっている。

だいたいはみんな一人で歩くけれど

このまま琴美を歩かせれば間違いなく落ちるだろう。

「それなら、高杉と二ノ宮が琴美ちゃんの手を引いて三人でランウェイ歩けば？

　同じクラスの三人組ってコトなら全然不自然じゃないだろ？」

みんながどうしたものかと考えていると姉川先輩が

なかなかナイスな提案を出した。

俺的には高杉も一緒というのは気に入らないが

琴美を一人で歩かせる訳には行かないし、

かといって、俺と二人だと後から女子共に何を言われるか・・・。

―――午後2時、コンテスト開始。

まず校内で行われた投票の順位と名前を呼ばれた後、

ステージにあがる。

そして、その後にいよいよアピールタイム。

俺と高杉は琴美を挟んで三人並んでランウェイを歩いた。

最前列の席では榎本さんが高杉に声援を送った後、

思いっきり琴美を睨んでいた。

そんな顔してたら高杉に嫌われるぞー？

だけど琴美は榎本さんの顔もまったく見えないらしい。

少し恥ずかしそうにしながらも笑っている。

しばらくして、秋川先輩がランウェイに進むと

野太い声が会場に響いた。

・・・で、トリは誰もが認める美男美女カップルの姉川先輩と水本先輩。

会場にはものすごい歓声が響き渡っていた。

アピールタイムが終わり、出場者は一旦控室に戻った。

後は結果発表を待つばかり。

「平野さん、なんか中学の時に戻ったみたいだね。」

高杉はウィッグをつけた琴美を見てニッと笑った。

「琴美が髪長かったの高杉知ってんの？」

入学した時はもう髪は短かったはずなのに。

「うん、平野さんと同じ中学だったし。」

「ふーん・・・そーなんだ。」

高杉・・・琴美と同じ中学だったのかよー。

―――約30分後、いよいよ結果発表。

まずは男子から・・・

「第三位・・・」

姉川先輩か？

高杉か？

「高杉和也くん！」

お、やっぱり。

校内三位かー、やるな。

客席を見ると思ったとおり、榎本さんが絶叫して喜んでいる。

「女子の三位は・・・」

水本先輩・・・は、もっと上だろうな。

琴美か、秋川先輩あたりだろうな。

それ以外の女子はたいしたことないし。

まぁ、俺の中では琴美がダントツ一位だけど。

「・・・平野琴美さん！」

おおぉっ！

「平野さん、こちらどうぞー！」

司会者に呼ばれ、琴美はようやく顔をあげた。

でも、その表情は驚いて固まっている。

まさか自分が選ばれると思ってなかったといった感じだ。

そういえば、眼鏡外してるから連れて行ってやらないと。

だけど、次の瞬間―――、

高杉が琴美の手を取った。

え・・・。

「こっち。」

高杉は司会者の前に琴美を連れて行き、

賞状とトロフィー、副賞を受け取った後も

手を繋いで琴美をエスコートしていた。

むー。

この時ばかりは榎本さんの気持ちがよーくわかった。

そして、男子の2位は姉川先輩。

女子の2位は秋川先輩。

1位が予想通り水本先輩。

・・・で、男子の一位が俺。

うぉっ！？俺っ？