First Kiss −First Love・22−

 

 

琴美と高杉を二人きりにして帰った俺はすごく後悔した。

 

あの後、二人で何を話したのかな?とか、

もしかして、高杉のヤツともう付き合う事になってたりしないよな?とか、

そんな事ばっかりが気になった。

 

そんなに気になるんなら初めから二人を置いて帰らなきゃいいじゃないか。

 

ごもっとも。

 

別に誰に突っ込まれたワケじゃないけど、

自分自身に突っ込んで、そして落ち込んだ。

 

あの時は高杉と楽しそうに話す琴美の顔を見たくなくて

さっさと帰ってしまった。

けど、それが返って後悔を生んだ。

 

俺って・・・バカ・・・。

 

 

そうして一週間が過ぎた月曜日―――。

放課後、俺が部活に行こうと席を立つと

「平野さーん、先輩来てるよー。」

と言う声が聞こえた。

 

教室の入口を見ると、美術部の部長・姉川俊介先輩が

腕組みをして立っていた。

 

ちなみにこの先輩は校内でも有名人だ。

と言うのも、ただイケメンってだけじゃなく、

めちゃめちゃ美人の美術部の副部長・水本千里先輩と

付き合っているから。

誰もが認める美男美女のカップルってやつだ。

 

クラスの女子共はキャーキャー言いながら姉川先輩を見つめている。

 

このミーハー共がっ!

 

姉川先輩は顔を引き攣らせている琴美の前にツカツカと歩み寄ると

「迎えに来た。」

と、言って琴美の手首を掴み、教室を出て行った。

 

・・・?

 

なんだ?今の?

 

 

琴美が姉川先輩に引き摺られて行ってから、

俺は部活に行く前、なんとなく気になって琴美の下駄箱を覗いてみた。

 

琴美はここ一週間部活にちゃんと出ていなかったのか、

すでに通学用の靴がない事がほとんどだった。

だけど、今日はまだ靴がある。

という事は、さっき姉川先輩が“迎えに来た。”と言って

琴美を引き摺って行ったのはきっと部活をサボらないように

連れて行ったんだろう。

 

・・・て、ゆーか、なんでそもそも琴美は部活をサボってたんだ?

あれだけ絵を描くのが好きなヤツなのに。

それに先週末の選択授業の時も、なんだかボーッとしてて、

何もしていなかったし。

 

いつもは楽しそうにニコニコしながら鉛筆を走らせている琴美が

何も描かずに“心ここにあらず”と言った感じで

溜め息ばかりついていた事がすごく気になっていた。

 

 

―――翌日。

朝、琴美の様子が気になって視線を向けると

いつものように笑いながら藤村さんや、武田と話していた。

 

一体、なんだったんだろう・・・?

 

まぁ、琴美が元に戻ったからいいけど。

 

・・・てか、相変わらず可愛いなぁー。

 

ちょっとだけ口元に手を当てて笑う仕草とか、

顔をクシャクシャにして、おなかを抱えて

爆笑しているトコとか・・・全部・・・全部。

 

やっぱり・・・俺、琴美の事が好きだ。

 

 

その日の放課後―――。

部活が終わって部室棟に向かっていると、

少し離れた校舎の影に人影があるのが見えた。

 

こんな時間にあんなトコで何してんだろ?

 

なんとなく気になってじっと見ていると

その人物は俺がよく知る人物だった。

 

高杉・・・?

 

そしてもう一人・・・高杉より背が低くて髪が長い

女子生徒だという事だけはわかった。

顔はなんとなく薄っすらと灯りに照らされて

見えていたけど俺の知らない子だった。

高杉が校舎の壁に手を突いて

その子の肩を押し付けて立っている。

 

こりゃまたなんとなく見ちゃいけない感じの場面?

 

なんてコトを思っていると、高杉はその女の子を

壁に押し付けたままキスをした。

 

げげっ!?

 

あいつ・・・確か彼女いたよな?

 

ある意味高杉も有名人だから、アイツが現在付き合っている

“彼女情報”は何もしなくても耳に入る。

そして、今アイツと付き合っている子はキスをしていた子とは別の子だ。

 

「・・・。」

俺は次の瞬間、あんなヤツに琴美を取られたくないと思った。

琴美と高杉を二人きりにして帰った時、

正直、琴美の事諦めようかな・・・なんて思っていた。

琴美も高杉もお互い好きみたいだし、

それなら俺が邪魔しないほうがいいと思った。

 

けれど・・・今、アイツが“彼女”以外の女の子と

キスしてるトコを見て、琴美を取られたくないって思った。

 

あんなヤツに取られるくらいなら・・・。

それなら、絶対琴美を俺の方に振り向かせてやるっ!

 

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