First Kiss −First Love・12−

 

 

―――7月の後半。

明日から夏休み。

 

あ〜ぁ・・・これから約1ヶ月半、琴美に会えないのか・・・。

 

そんな事を思いながら体育館に移動してずらりと整列。

そして終業式。

俺は女子の列の真ん中あたりにいる琴美の後姿を穴が開くほど見つめた。

 

教室に戻ってからも琴美の姿を目で追った。

だけど、琴美はちっとも気がつかない。

いつものように藤村さんと武田達と楽しそうに話している。

 

今日は琴美と一緒に帰れるかな・・・?

 

夏休みで会えないなら、せめて今日は一緒に帰りたい・・・

 

だけど・・・

 

神様はいつも意地悪・・・。

 

部活が終わって、なかなか来ない琴美の下駄箱を見に行ってみると

通学用の靴はもうなかった・・・。

美術部の方は今日は部活がなかったみたいだ。

 

「はぁ・・・。」

なんだか溜息が出てきた・・・。

 

 

8月、夏休み真っ只中―――。

今日から二週間バスケ部の合宿がある。

湘南にある民宿でサッカー部と合同でやるらしい。

 

・・・という事は、高杉も一緒なのか。

 

バスケに没頭できる時間が増えるのは正直、嬉しかった・・・

いや、嬉しいというより琴美と会えない分、気が楽だった。

 

 

朝10時、民宿に到着。

バスから降りると民宿の従業員が笑顔で出向かえてくれた。

人の良さそうなおじさんとおばさん、その息子らしき大学生と

後はパートのおばちゃんが数人。

 

バスケ部とサッカー部は、さっそく二つの大広間に別れてミーティング。

合宿の細かい予定と、練習についてとか・・・

そしてこの大広間がそのまま俺達の寝る場所になる。

ちなみに岡嶋先生は別室。

まぁ、当たり前だけど。

 

 

ミーティングが終わり、今度は寝る位置を決める事になった。

 

俺は別にどこでもいいんだけど。

 

3年生、2年生、1年生でそれぞれジャンケンをして勝った順に

好きな場所を取って行く。

・・・で、俺の隣はなぜか武田になった。

 

よりにもよってコイツが隣かよ・・・。

 

 

そんなこんなであっという間に昼食の時間―――。

食堂に移動して3年生、2年生、1年生の順に並んで列を作っていると

厨房の中に見覚えのある顔を発見した。

 

俺・・・幻覚が見えてんのかな?

 

ゴジゴシと目を擦ってみた。

 

やっぱり、幻覚・・・?

会いたい気持ちが強すぎて、大きすぎて?

 

でも・・・俺の目の前には確かに会いたいと思っていた人物がいた。

 

「琴美!?」

「琴美ちゃん!?」

「平野さんっ!?」

武田も高杉も琴美に気が付いたらしい。

 

「宗!?」

琴美も驚いた顔で俺達の顔を見つめていた。

 

「琴美ちゃん、なんでココにいるの?」

 

「あ、ココ親戚がやってて、毎年お手伝いに来てるの。」

武田の質問に琴美はにっこり笑って答えた。

 

ここ、琴美の親戚がやってるんだ。

 

神様は意地悪なんかじゃなかった。

いや、むしろ俺の味方かもしれない。

そう思ったのは、琴美の首元に俺がプレゼントした

あのペンダントトップがチェーンネックレスに通して

つけてあったから。

 

ホントにつけてくれてるんだ。

 

すごく嬉しかった。

琴美が受け取ってくれたのはいいけれど、

ホントはつけてくれないんじゃないかと思ってた。

 

「なんか合宿楽しくなってきた。」

そう言って琴美に笑みを向けるとなんだか顔を赤くしていた。

 

 

昼メシの後、近くのショッピングモールに買出しに行く事になった。

バスケ部とサッカー部から一人ずつ案内役の琴美が連れて行ってくれるらしい。

だから、俺は買出し役に立候補するつもりだった。

 

だけど俺はレギュラーに選ばれているから練習を抜けさせる訳には

いかないと岡嶋先生言われ、買出し役は武田になった。

 

えー。

 

仕方なく練習に向かっていると、琴美と武田、

高杉が民宿から出て行くのが見えた。

どうやらサッカー部の買出し役は高杉らしい。

 

よりにもよって高杉かよー。

 

俺は三人の後姿を見送りながら民宿の隣に併設してある体育館に向かった。

 

もちろん、練習の間もずっと琴美と高杉の事が気になっていた。

 

 

それから2時間くらいして三人が帰って来た。

 

「おぅ、おかえり。」

ちょうど休憩していた俺は荷物運びの手伝いをするフリをして近寄った。

 

琴美の様子を伺ってみても特に変わった様子はない。

高杉も至ってフツーだ。

 

まぁ、武田も一緒にいたワケだし・・・。

 

俺は琴美と高杉の間に何もなかった事にホッとした。

 

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