First Kiss −8−

 

 

校外学習から数日が過ぎたある日の昼休憩。

今日のお弁当タイムはちょっと豪華。

・・・と言うのも、4時限目の調理実習でクッキーを作ったから。

 

当然、女子は高杉くんと宗にきれいにラッピングしてプレゼント。

 

メグちゃんはもちろん彼氏の西山くんにあげる。

 

あたしはと言うと・・・

別に誰にもあげる予定はないので、昼休憩にメグちゃんと

食後のデザートとして食べることにした。

 

お弁当を食べ終わって、クッキーを出すとバターのいい香りが鼻をくすぐった。

 

「お、琴美ちゃんが作ったクッキー?」

武田くんが匂いにつられてやってきた。

 

「うん。」

 

「俺にも食べさせて!」

「どうぞ。」

クッキーはメグちゃんと二人で食べるには少し多いかな?

と思っていたからちょうどいい。

あたしがにっこり笑ってそう言うと武田くんは嬉しそうに

「いただきまーす!」

と、さっそく一口サイズのクッキーをパクリと口に放り込んだ。

 

「うまい!」

武田くんはあたしににっこり笑って言ってくれた。

 

「そぉ?」

 

「うん、甘さもちょうどいいし、サクサクしてる。」

武田くんがそう言うと、周りにいた男子達が

「俺にも味見させて!」

と集まってきた。

 

そして、クッキーはあっという間に完売。

なかなか好評だった・・・と思う。

 

 

放課後、美術部の部活が終わってすっかり暗くなった道を帰っていると

後ろから誰かに呼び止められた。

 

「琴美。」

 

・・・?

誰だろう?

 

そう思いながらあたしが振り向くと、

宗が手を振りながら近づいてきた。

 

・・・あれ?

まだ学校にいたんだ?

 

「こんな遅くまで部活?」

宗はあたしの隣に並ぶと爽やかな笑顔で聞いてきた。

 

「うん。宗は?」

 

「俺も今、部活終わって帰るトコ。」

 

え?

部活?

クラブ・・・入ってたんだ。

 

あたしがキョトンとしていると、

「帰宅部だと思ってた?」

そう言って苦笑いされた。

 

うへ・・・っ、バレバレ。

 

「何部?」

「バスケ。」

 

へぇー、へぇー、へぇー。

 

「意外?」

「うん・・・まぁ。」

けど、考えてみればこれだけ背が高いんだし、

そう言われてみればバスケ部のよーな気がしないでもない。

 

「そういえば・・・俺もクッキー食べたかったなー。」

宗はちらりと横目であたしを見た。

 

・・・?

 

クッキー?

 

あ・・・昼休憩にみんなで食べた調理実習で作ったヤツね。

 

「いっぱいもらってたじゃない。」

あたしは宗の机の上に山積みになったクッキーを思い出し、

つい吹き出してしまった。

 

「琴美のが食べたかったの。」

 

「あたしのより、みんなから貰ったクッキーの方がおいしいと思うよ?」

 

「武田は琴美の方が全然うまいって言ってたもん。」

 

え?・・・武田くん?

いつ、そんな話したの?

 

あたしが不思議に思っていると

「さっき部活が終わって腹が減ったからバスケ部のみんなで

 もらったクッキー食べたんだ。」

と、宗が言った。

 

そういえば武田くんもバスケ部に入ったとか言ってたなー。

だからか。

 

「もうクッキー作らないの?」

「うん、次の調理実習はまた別のメニューだし。」

「えー。」

 

そんなに食べたいのかな?

 

「家で作ったりしないの?」

「時々、作ってるけど・・・」

「マジッ!?今度いつ作る予定?」

「い、いつって・・・」

 

いつ作るとかそんなのは特に決めていない。

いつも気が向いたら作ってるだけ。

 

「・・・そ、そんなに・・・食べたい?」

「うん!」

宗はにんまりと笑った。

 

この笑顔は何・・・?

 

「・・・。」

あたしは黙ったまま宗を見つめ返していた。

 

宗て・・・綺麗な目してるな。

遠足の時、二人で話してる時に気付いたけど、

目の色がみんなと違う・・・。

綺麗な緑色・・・翡翠みたい・・・。

 

カラーコンタクト・・・?

 

「俺の顔になんかついてる?」

あたしがじっと見つめてたままでいると宗は苦笑いした。

 

「目・・・」

 

「目?」

 

「カラーコンタクト?」

 

「あ、目の色?」

 

「うん。」

 

「コンタクトじゃないよ。自前。」

そう言うと宗は思いっきり顔をあたしに近づけた。

 

「ほら、コンタクトなんか入れてないでしょ?」

 

あたしは急に顔が近づいてきてびっくりしたけど、

コンタクトは入れてないのがわかった。

 

「俺、ハーフなんだよ。知らなかった?」

 

はーふ?

 

あー、どうりで髪もきれいな茶髪だと思った。

それで目の色も黒じゃないんだ。

 

「綺麗な色だね。翡翠みたい。」

あたしがそう言うと宗は少し驚いていた。

 

あれ?

あたしなんか変なコト言ったのかな?

 

「“エメラルドみたい”とはよく言われるけど、

 翡翠って言われたのは初めてかも。」

 

エメラルド・・・。

うーん・・・あたしの中では翡翠のイメージなんだよね。

 

「俺は翡翠の方が好きだから、そう言われて嬉しいけど。」

宗はニコッと笑った。

 

チャラ男は・・・笑顔がいい・・・。

 

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