First Kiss −6−

 

 

昼食の後はオリエンテーリング。

渡された地図と方位磁石を使って指示されたポイントに行き、

通過した証にスタンプを押して目的地まで行く。

一応、上位20位までとブービー賞があるらしい。

といっても学校が出す賞品だからみんなあまり期待はしていない。

だから、あたし達のグループはゆっくり散策しながら行こうという事になった。

 

デジカメを持っていたあたしはスケッチ用に撮ったり、

グループのみんなで撮ったり・・・

・・・で、あちこち寄り道をしたわりには思ったより早くゴールし、

あたし達はギリギリ20位以内に入った。

 

一応、リーダーの武田くんが賞品を受け取りに行った。

賞品の中身は意外にもシャーペン。

色違いで6色あってちょっと細身で軽い。

よくあるフツーのじゃなくて、セレクトショップで買ってきたみたいだ。

なかなか可愛い。

 

「20位だし、学校の賞品だから全然期待してなかったけど、なかなかいいね。」

武田くんはみんなの前にシャーペンを並べた。

 

スカイブルー、ジェードグリーン、サーモンピンク、

クリームイエロー、ホワイト、ブラックの6色。

 

「レディーファーストってコトで平野さんと藤村さん、

 先に好きな色取っていいよ。」

武田くん達がそう言ってくれたのでメグちゃんとあたしは先に選ぶことにした。

 

ずらりと並んだ6本の中で一番先に目に付いたのは

ジェードグリーン。

 

“ジェード”・・・て翡翠だよね?

 

翡翠みたいなきれいな緑色。

あのストラップみたい・・・。

 

あたしはジェードグリーンのシャーペンを手に取った。

 

これにしよう。

 

メグちゃんはサーモンピンクにしたみたいだ。

そして、武田くんはスカイブルー、菊池くんはクリームイエロー、

堀口くんはホワイト、浜田くんはブラックをそれぞれ手に取った。

 

 

夕方5時。

今度は夕食の準備。

メニューはカレーライスとマカロニサラダ。

 

武田くん達は昼食の時と同じ様に火を熾したり、

重い食材を運んだりしてくれた。

あたしとメグちゃんはもちろん調理担当。

 

 

そしてあたし達のグループは絶妙のチームワークで

昼食の時と同様、一番に出来上がった。

 

「いただきます。」を言ったと同時に武田くん達は

勢い良く食べ始めた。

 

さすがに食べ盛りの男子四人の食べっぷりはすごい。

 

・・・てゆーか、飢えた野獣?

 

 

あっとゆー間にカレーのルーは完売。

けど、ごはんがちょっと残ってしまった。

 

多めに炊いたけどさすがに多かったかな?

 

「ごはん中途半端にあまっちゃったね。」

あたしは御櫃の中を覗きながら、どーしたもんかと考えた。

 

「このまま、残しとくワケにもいかないしね。」

メグちゃんも考え込んだ。

 

「うーん・・・おむすびにしちゃう?」

あたしがそう言うと、武田くん達は

「「「「それ、グットアイディア!」」」」

と口を揃えて喜んだ。

 

「あー・・・でも、具は高菜があるけど海苔がない。」

「海苔なんかなくても全然OK!」

「あ、そぉ?」

「うん!だからおむすびお願いします!」

「らじゃー。」

というわけで、あたしとメグちゃんは“高菜入り海苔なしおむすび”を作った。

 

ちょうど4つ。

 

「これで夜食に困らない。」

武田くん達はにんまりと笑った。

 

え・・・。

 

夜食・・・?

 

どんな胃袋してんの?

 

さすが男の子。

 

 

翌日。

朝食の後は登山。

 

あたしは例によってデジカメ持参。

頂上はきっと絶景なんだろうなと思いつつ、

だけどスケッチブックはさすがに持っていけそうにない。

 

 

登山を始めて一時間を過ぎた頃、

体育会系ではないあたしはまだ半分しか登っていないのに

すでに体力をかなり消耗していた。

武田くん達とメグちゃんはまだまだ元気。

さすが体育会系。

 

「琴美、大丈夫?」

少しずつ距離が開き始めたあたしを

メグちゃんはさっきから何度も振り返って気にしてくれていた。

 

「・・・うん・・・大丈夫ー・・・。」

・・・て、ホントはちょっとキツい。

 

「メグちゃん、気にしないで先に行っててー。」

あたしがそう言うと、

「でもー・・・。」

とメグちゃんは足を止めた。

 

すると、メグちゃんと一緒にいた武田くんも足を止めた。

 

「琴美ちゃん、手。」

武田くんはそう言ってあたしに微笑んだ。

 

「・・・?」

 

・・・手?

 

手がどうかした?

 

そう思っていると、武田くんはあたしの左手を取った。

 

「・・・っ!」

 

「こうすれば少しは楽だろ?」

武田くんはあたしの手を軽く引っ張ってゆっくり歩き始めた。

 

「あ、ありがと・・・。」

あたしは顔が赤くなっているのがバレないように俯いた。

 

 

結局、武田くんは頂上まであたしの手を引いて登ってくれた。

「武田くん、ありがとう。疲れたでしょ?」

「こんなの全然平気、体力には自信あるから。」

武田くんはニッと笑った。

 

 

昼食の時間、あたし達のグループと二ノ宮くんのグループが隣同士になった。

そしてここでも二ノ宮くんの隣の席をめぐって

二ノ宮くんのグループの女子がなにやら騒いでいる。

 

「そんなのもうどーでもいいから早く食おうぜ?」

あたしの席のちょうど真後ろに二ノ宮くんが座っている。

背中合わせになっていて二ノ宮くんの顔は見えないけど

ちょっとウンザリしてる感じの声が聞こえた・・・。

 

「隣は大変だな。」

菊池くんは苦笑いしながら隣のテーブルをちらりと見た。

 

「俺らは実に平和だねぇー。」

堀口くんも同じ様に隣をチラ見して苦笑している。

 

「メシの度にアレじゃあな?」

浜田くんはなんだか二ノ宮くんに同情しているみたいだ。

 

「ホント、琴美ちゃんと藤村さんが一緒でよかった。」

あたしの隣に座っている武田くんはニコニコしながら言った。

 

 

昼食の後はしばらく自由時間。

もちろんメグちゃんは西山くんの所へ行った。

 

あたしは絶景ポイントを探しにウロウロウロウロ・・・

すでに30分くらい徘徊。

だけど、なかなかいい場所が見つからない。

 

このまま徘徊だけで自由時間が終わるのはヤダな・・・。

 

そう思っていた時、

「平野さん。」

と、あたしを呼ぶ声がした。

 

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