First Kiss −31−

 

 

コンテストが終わって、あたしは校舎の屋上でまったりしていた。

 

なんか・・・疲れたな・・・。

 

フェンスに少し凭れかかってグラウンドを眺めていると

「どこにいるかと思ったら、ここにいたんだ?」

と、突然後ろから声をかけられた。

 

・・・嫌な予感。

 

あたしはゆっくり振り向いた。

 

・・・やっぱり・・・な。

 

高杉くんが爽やかな笑みを浮かべてあたしに近づいてきていた。

 

「捜してたんだ。」

 

「・・・?」

 

あたしになんか用なのかな?

 

「・・・前に話してた事なんだけどさ・・・」

 

前に話してた事・・・?

なんだっけ?

 

「俺と一緒に帰った時に話したでしょ?」

 

???

 

それって・・・いつ?

 

「二ノ宮が俺達に気を使って先に帰った時だよ。」

 

「あ・・・。」

 

あの時の事は正直まったく憶えていなかった。

だって・・・失恋したと思って、そのショックで

高杉くんの声もまったく耳に入っていなかったから。

会話も全部適当に返事をしてたよーな気がする・・・。

 

「俺に彼女がいなかったら・・・て話・・・、

 夏の合宿の時にもしたでしょ・・・?」

 

あの話・・・。

 

「考えてくれた?」

 

本気だったの?

てっきり、あたしをからかってるんだと思ってた。

 

「・・・で、でも高杉くん、彼女いるでしょ?

 昨日も一緒に模擬店廻ってたじゃない。」

 

「それがさー、昨日別れちゃったんだよねー。」

 

「え・・・。」

 

「それでさ・・・」

「で、でも、もう新しい子がいるんじゃないの?」

「まだ今のところフリー。」

「・・・。」

 

“今のところ”・・・ね。

 

「平野さん・・・前に俺の事、好きって言ってくれたよね?」

 

確かに言ったよ?

でも、今はもうそんな気持ちありませんからっ!

 

「俺と付き合わない?」

まるで断る気なんてトーゼンないよね?と言った顔で高杉くんは言った。

 

「・・・。」

 

断る気満々なんですけど・・・?

 

「・・・高杉くん・・・あたし・・・」

「高杉!」

他に好きな人がいる・・・そう言おうとした時、宗が現れた。

 

ひょっとして・・・今の話・・・聞かれた・・・?

 

「・・・なんだよっ?」

高杉くんは少しムッとした顔をした。

 

「模擬店、そろそろ終わるってよ。」

「あ、そう。」

「つーか、さっきから榎本さんが『高杉くん、どこに行った?』って

 騒いでたから早く戻ってやれよ。」

 

「えー。」

高杉くんはげんなりした顔をすると「んじゃ、行こうぜ。」

と、あたしに言った。

 

「あ、えーと・・・あたし、先に美術部の方に行くから・・・。」

高杉くんとはなんとなく、一緒に戻りたくなかった。

 

「そう・・・じゃあ先に戻るわ。」

そう言うと高杉くんは教室へと戻っていった。

 

 

高杉くんが教室に戻った後、あたしは宗と二人きりになった。

 

「・・・琴美。」

 

「ん?」

 

「高杉と何話してたの?」

 

・・・何って・・・

 

「せ・・・」

「世間話?」

世間話・・・と言おうとしたら先に宗に言われた。

 

「・・・うん。」

あたしは宗と目を合わせないまま答えた。

 

「・・・なんで嘘つくんだよ?」

「っ!」

あたしはその言葉にドキッとして思わず宗の顔を見上げた。

 

「・・・あいつと付き合うのか?」

 

「宗・・・聞いてたの・・・?」

 

「・・・ごめん・・・立ち聞きするつもりはなかったんだけど・・・」

 

やっぱり聞こえてたんだ・・・。

 

「琴美・・・高杉と本気で付き合うつもりなのか?」

 

「・・・宗には・・・関係ないじゃない・・・。」

 

「高杉がどんなヤツかくらい琴美だってわかってんだろ?」

 

わかってるよ。

 

「あいつなんかと付き合うのやめろよ。」

 

・・・なんでそんな事言うの?

他に好きな子がいるくせに、

思わせぶりな事言わないでよ・・・。

 

「そろそろ、行かなきゃ・・・。」

あたしはこれ以上、ここに居たくなくて逃げるように踵を返した。

 

「琴美・・・!」

すると後ろから宗があたしの腕を掴んだ。

そして強く引っ張られたかと思うと次の瞬間、

宗の顔で視界が塞がれた。

 

・・・っ!?

 

一瞬、何が起こったのか全然わからなくて・・・

でも、目の前には宗の顔・・・というより、

あたしの唇を宗の唇が塞いでいた。

 

・・・て、キス・・・されてる・・・!?

 

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