First Kiss −27−

 

 

―――10月。

学園祭が行われる一ヶ月前。

そろそろクラスで出し物をやるのか、模擬店をやるのか決めなければならない。

そんなワケで今日のHRは学園祭実行委員に選ばれた鈴木くんの進行で

何をやるか決める事になった。

 

みんなの意見は模擬店をやる事で決定。

理由は簡単。

演劇とかだと男子の主役はまちがいなく高杉くんか宗。

そしてそれによって女子の相手役争いが起こるから。

余計な争いを避けるために演劇の類はなしという事になった。

 

「じゃあー、なんの模擬店がいいかみんな希望を言ってみてくれる?」

たこ焼き、焼きそば、もんじゃ焼き、ベビーカステラ・・・

進行役の鈴木くんはチョークで黒板に模擬店の候補を次々と書いていった。

 

「メイド喫茶とかは?」

あたしのすぐ後ろから声がした。

振り向いて確認はしていないけど多分、武田くん。

 

「おー、それいいねぇ!」

「それ男子が楽しいだけでしょ?」

「そうよ、そんなの却下!」

男子からは支持されたけど女子からの圧倒的な苦情で“メイド喫茶”はあっさり却下。

 

「でもさー、なんか食べ物系だと他のクラスもやりそうだし、

 一部の女子しかまともに料理できねーの校外学習の時に実証済みだしなー。」

そんな声がどこからともなくあがった。

「あー、確かに。」

そう言って男子達は頷いた。

そしてそれに何も反論できない女子達・・・。

 

 

「じゃぁ・・・駄菓子屋さんとか・・・どうかな?」

みんながどうするか悩んでいる中、少し小さな声で言ったのは、

あたしの女神・安藤さんだった。

 

「それなら、別に火を使う訳じゃないし・・・」

「けど、それだと面白味に欠けててお客さん入らなそう。」

安藤さんの言葉を榎本さんが遮った。

ちなみに熱烈な高杉くん派の女子。

だから同じ高杉くん派の安藤さんをライバル視しているっぽい。

 

やな感じ・・・。

 

安藤さんは榎本さんに否定されてちょっとヘコんだ。

 

「面白味がないなら、面白くすればいいんじゃない?」

あたしは女神を助太刀するべく反撃に出た。

「ただ駄菓子を並べて置いとくんじゃなくて、くじとか作って

 1等とか2等とかの詰め合わせを用意したり、女の子向けに

 かわいいパッケージのチョコとかキャンディーの袋詰めを作るとか。」

 

「それだと手間がかからない?」

榎本さんは今度はあたしに噛み付いてきた。

 

「手間がかかるのは何やったって一緒だろ?」

あたしがまた反撃しようと口を開きかけた瞬間、宗が擁護してくれた。

「下準備に手間がかかるか、当日調理したりで手間がかかるかの違い。

 それに駄菓子なら当日は店番くらいだから、むしろ楽だと思うけど?」

 

「・・・。」

宗にそう言われ、榎本さんは何も言えず黙り込んだ。

 

「俺もそう思う。」

今度は高杉くんが口を開いた。

「安藤さんと平野さんの案、いいと思うよ。」

もはや高杉くんにまでそう言われ、榎本さんは引き下がるしかなくなった。

 

「じゃ・・・駄菓子屋で決定でいい?」

鈴木くんはクラス全員の同意を求めた。

 

 

模擬店はそのまま駄菓子屋で決定し、あとはグループ分け。

買出し部隊、経理部隊、店番部隊、装飾部隊・・・とか。

あたしはもちろん装飾部隊を希望した。

看板を作ったり、店内のレイアウトを考えたりするグループ。

メグちゃんもあたしと同じ装飾部隊を希望した。

 

他の女子はと言うと・・・例によって宗と高杉くんが

どこのグループを希望するのか様子を伺っている。

だから、女子はまだどこのグループになるか決まっていない。

 

まったく一々面倒臭いな・・・。

 

 

「「俺、装飾がいい。」」

装飾部隊の空きがあと二人になった時、同時に口を開いたのは宗と高杉くんだった。

 

えー。

 

宗はウェルカムだけど・・・高杉くんは・・・。

 

あたしはメグちゃんと顔を見合わせた。

そして、直後に沸き起こる「あたしも!」の声。

女子が全員装飾希望になった。

 

げー。

 

「装飾のほうは高杉と二ノ宮が入ってもう定員数揃ったからダメ。」

鈴木くんは騒いでいる女子達にピシャリと言い放った。

 

そしてブーイングの嵐。

 

「文句言うなら最初から装飾希望すればいいじゃん。」

鈴木くんはさらに冷たく言い放った。

 

ごもっとも。

 

その後、女子達はしぶしぶ他のグループへ。

榎本さんはずっと、あたしを睨みつけていた・・・ような気がした。

 

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