First Kiss −11−

 

 

6月、そろそろ体育祭の時期。

 

・・・で、今はみんなで誰がどの種目に出るかを決めている。

最低、一人一種目出場する事になっていて、

運動神経のいいメグちゃんは何種目か出るみたいだ。

 

けど、あたしは運動系は苦手。

・・・なので一種目しか出る気がない。

 

 

みんなの出場種目がどんどん決まっていく中、

あたしは何に出ようか決めかねていた。

だって、どれも出たくないから。

 

 

・・・そして、とうとう決められないまま

最後の種目。

 

二人三脚。

 

しかも男女ペア。

 

うーん・・・一番ビミョーなのが残ったな・・・。

 

男子は誰が出るのかな?

 

「じゃ、最後。二人三脚に出場したい人、挙手してください。」

進行役の体育委員・小宮くんがそう言うと、

パラパラと何人かが手を挙げた。

 

男子は・・・お、堀口くんが挙げてる。

 

・・・あとは・・・

 

・・・あ。

 

宗もか・・・。

 

あたしはまだ一種目も出る予定がないから、

ここで手を挙げようかと思ったけどやめた。

宗との“例の約束”が頭を過ぎったから。

 

“アレ”がここで発動したらまずいしね・・・。

 

・・・と、思っていると

「平野さん、まだ一種目も決まってないよね?これ出ない?」

小宮くんに言われてしまった・・・。

 

気づくなよ・・・。

 

けど、ここで出なかったら出なかったで、せっかく決まっている

他の種目を決め直さなきゃいけなくなるしな・・・。

 

「・・・あ、じゃ・・・出る・・・。」

あたしは仕方なく挙手した。

 

「えーと、じゃ二組選出するから・・・男子はこのまま

 二ノ宮と堀口にお願い。」

小宮くんにそう言われ、宗と堀口くんの出場が決定した。

そしてその瞬間、さっきまで手を挙げていなかった女子達が

「じゃあ、私も出る!」と一斉に挙手を始めた。

 

小宮くんは、そうなる事を予想していたのか、

「今さら挙手してもダメ。平野さんはこれ以外に出る予定ないから

 確定ね。後は最初に挙手してた女子の中から決めるから。」

とバッサリ斬った。

 

えー。

 

こんなに出たい人がいるんだから、そっちから選んでよー。

 

そう思っていると何やら視線を感じて、その方向に目を向けると

宗がにやりと不敵な笑みを浮かべていた。

 

・・・ま、まさか・・・ね?

 

 

最初に挙手した女子はもちろん全員宗狙い。

さっそく何で決めるか話している。

前回のあみだで、まんまとあたしが“当たり”を引いてしまったから

今回は別の方法で決めるらしい。

 

てゆーか、あたしは堀口くんがいい。

変に騒がれなくて済むから。

そう思って、あたしから堀口くんを指名をしようと口を開きかけた時、

「俺が指名しちゃダメ?」

と宗が言った。

 

・・・うげ。

 

小宮くん・・・

 

お願い・・・駄目って言って・・・!

 

「いいよ。」

 

あたしの願いとは裏腹に小宮くんはあっさりOKした。

 

ガーン・・・。

 

「むしろその方が早い。」

そう言って、小宮くんは「女子もそれでいいね?」と

有無を言わさないような顔をした。

 

立候補した女子達は何か言いたそうな顔をしていたけど

宗の指名なら・・・と言う事でおとなしく首を縦に振った。

 

「言っておくけど、指名された人は拒否権なしね?」

宗はニッと笑って候補者の女子達に視線を向けた。

 

“候補者の女子達”・・・

 

もちろん、あたしもそこに含まれているワケで・・・。

 

・・・けど、考えてみれば宗があたしを指名するとは限らない。

 

だって、候補者の中には可愛い子もたくさんいるし。

 

うんうん。

 

そうよ、そうよ。

 

「じゃ、琴美。」

 

・・・え。

 

宗は他の候補者には全然目もくれないでいた。

 

・・・まぢ?

 

クラス中の女子が騒ぎ始める。

そして、なにやら漂う不穏な空気・・・。

「・・・え、えーと・・・、あたし・・・堀口く・・・」

「拒否権なし。」

宗は涼しい顔であたしの言葉を打っ手切った。

 

ひど・・・っ。

 

「じゃ、二ノ宮の相手は平野さんでいいね?」

小宮くんは嫌だとは言わないよね?と言った顔であたしに視線を向けた。

 

あたしが引き攣った顔で宗を軽く睨むと

“約束忘れたの?”と言った顔をされた。

 

う・・・。

 

「・・・。」

あたしは無言で頷くしか出来なかった。

 

・・・宗・・・オボエテロ。

 

・・・チャラ男は悪知恵も働く。

 

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