First Kiss 続編・高杉問題 −3−

 

 

あたしと宗は付き合うようになってから

部活が終わった後、毎日一緒に帰るようになった。

 

ちなみに朝も一緒だけど・・・。

 

 

そして一週間が過ぎた日の放課後―――。

 

部活が終わり、美術部の部室を出て昇降口に行くと

安藤さんがいた。

 

お、女神だ。

 

「安藤さん。」

あたしが声を掛けると安藤さんは驚いた顔で振り返った。

 

「・・・あ、平野さん。」

 

「安藤さんも今、部活がおわっ・・・

 どうしたのっ!?その手?」

安藤さんの右手からは血が流れていた。

それはたった今、怪我をしたかのように指を伝っていた。

 

「・・・な、なんでもない。たいした怪我じゃないから。」

安藤さんはそう言うと、慌ててポケットティッシュを出して傷口を押さえた。

 

だけど、傷が深いらしくなかなか血が止まらない。

 

「ちょっと見せて。」

あたしは安藤さんの右手を取り、傷を確認した。

すると、親指と人差し指、中指に切り傷があった。

しかも、ちょっとやそっとの怪我じゃない。

 

「なんで、こんな・・・一体、どうしたの?」

あたしは安藤さんの顔を覗き込んだ。

それでも安藤さんは理由を話そうとしない。

 

どうして何も話そうとしないんだろ?

 

あたしはとりあえず、自分のポケットティッシュを出した。

安藤さんが持っていたポケットティッシュがなくなってしまったから。

そして、ティッシュを安藤さんに渡すと彼女の下駄箱が目に入り、

そこにある開封された封筒とその中から何か光っている物が見えた。

 

・・・?

 

あたしはその封筒を手に取った。

 

「これ・・・っ!?」

封筒の中にあったのは剃刀の刃だった。

多分、この封筒を開けた時に剃刀の刃が仕込んであって

それで指を切ったんだろう。

封筒にも少しだけ血がついている。

 

「誰がこんな・・・。」

 

なんて悪質な嫌がらせ。

 

「あの・・・高杉くんには言わないで・・・。」

安藤さんはようやく血が止まりかけた傷をティッシュで押さえたまま言った。

そして「お願い、絶対言わないで・・・。」と、あたしの顔をじっと見つめた。

 

「うん・・・わかった。」

 

確かにこんな事、高杉くんにはあまり知られたくないよね?

だって、安藤さんが嫌がらせを受けたとなると・・・

だいたいの犯人の予測がつく。

 

そして・・・

 

その犯人は―――。

 

 

「でも、安藤さん、気をつけたほうがいいよ?

 手紙とか置いてあっても、もう開けないほうがいいかも。」

 

「うん・・・ありがとう。」

安藤さんはコクッと頷いた。

 

しばらくしてようやく傷口から流れていた血が止まり、

あたしは持っていた絆創膏を貼ってあげた。

 

 

剃刀の刃が仕込んであった封筒を処分して二人で正門に歩いていくと、

宗と高杉くんが待っていた。

 

「「おっそーい。」」

宗と高杉くんはちょっとだけ口を尖らせた。

 

「ごめん。ちょっと昇降口で安藤さんが転んで怪我したから

 救出してたら遅くなっちゃった。」

あたしがそう言うと安藤さんも苦笑いして「ごめんね。」と言った。

 

「まみ、大丈夫?」

高杉くんが心配そうな顔で安藤さんに視線を移した。

 

「うん、平気。」

安藤さんは高杉くんに心配かけないようににっこり笑った。

 

「帰ろ。」

宗があたしの手を取り、その言葉と共にあたし達四人は

駅に向かって歩き始めた。

 

「痛っ。」

安藤さんの声がして視線を向けると

高杉くんが手を繋ごうとしたらしく、

安藤さんの右手を握りかけていた。

 

「ごめんっ。てか、そんなに酷い怪我なのか?」

高杉くんは安藤さんの右手の絆創膏をじっと見つめた。

 

「そ、そんな事はないんだけどー・・・」

安藤さんは高杉くんと目を合わせないように

ちょっとだけ視線を外した。

 

「あ、あのね・・・思いっきり手を地面についちゃったし、

 さっき血が止まったばっかりだから。」

あたしは咄嗟にそう言って誤魔化した。

すると、高杉くんは納得したように「そっか・・・。」と言った。

 

そして高杉くんは手を繋ぐのを諦めると、その代わり自分の腕に

安藤さんの腕を通させた。

 

おーっ、さすがチャラ男。

手が繋げないなら、腕を組むってか?

 

 

それから四人で同じ電車に乗り、安藤さんはあたし達が降りる

一つ前の駅で降りた―――。

 

あたしと宗、高杉くんは電車の窓からバイバイと手を振った。

 

 

電車が発車して安藤さんの姿が見えなくなると

高杉くんがくるりとあたしに振り返った。

 

「さてと・・・まみもいなくなった事だし、

 本当の事を話しても貰おうか・・・平野さん。」

 

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