Calling 第41話 クエストと報酬 その2 -1-

 

 

――年が明けて、一月。

 

いよいよ本命の大学の試験日が近づいてきた。

いつもは夕方から来る家庭教師の美夏さんも、今日から三日間、

最後の追い込みで昼から来てくれる事になっている。

 

そして俺の部屋に入るなり、美夏さんは開口一番

「大地君、君にクエストを与えようっ」と、腕組みをした。

 

「は? クエスト?」

(また訳のわからん事を……)

 

「今度受ける大学に絶対合格する事!」

 

「え……そんなクエストにしなきゃいけない程、俺、やばいんすかっ?」

 

「報酬は、なんと……っ」

 

(あ、スルー?)

 

「鈴ちゃんの超レア画像!」

「っ!?」

 

(なにっ)

 

「お? 食い付いた?」

美夏さんはにやりと笑った。

 

「てか、なんで美夏さんがそんなの持ってんの?」

 

「ふふん、私の彼氏が鈴ちゃんの義理のお兄さんだっていう事を忘れたのかしら〜?」

 

(入手経路は剛史さんか)

「いや、それより今度受けるトコ、俺やばいの?

 学校の先生には大丈夫だろうって言われたんだけど」

 

「んー、ちょっとギリギリかも?」

 

「マジっすか……」

 

そして俺は三日間、それはもう人生で初めて今まで以上に死に物狂いで猛勉強をした。

 

 

     ◆  ◆  ◆

 

 

−−−−−

おはようございます。

試験、頑張ってくださいっ!

 

−−−−−

 

試験日当日の朝、ホテルの部屋を出た時に鈴からメールが届いた。

 

−−−−−

おはよう。

メールありがと。

頑張るよ。

 

Daichi

−−−−−

 

本当は一週間くらい前まで“やっぱり別の大学に願書を出せばよかった”

なんて思っていた。

試験を受けるのをやめようかな……とも。

 

実は今日受験する大学は都内じゃなくて県外で家からも距離がある。

だから前日からホテルに泊まっていたのだ。

 

しかし、もし合格すれば本命だから当然ここに通う事になるし、

家を出て一人暮らしする事になるかもしれない。

そうなれば鈴と毎週会うのは難しくなるわけで……そんな訳で俺は四日前まで

既に合格通知が来ている滑り止めで受けた都内の大学に行こうかとも考えていた。

鈴にもその事は詳しく言っていなかったし。

 

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