Calling 第15話 救出 -1-
――七月に入り、夏休みも近づいてきた頃。
今日から一週間、期末考査があって午後からは授業も部活もない。
久しぶりに“帰宅部”と同じ時間帯の下校だ。
そして駅前に辿り着くと、前方から軽そうな女子大生が近づいてきた。
「ねぇねぇっ、ちょっといい?」
「?」
「今、カットモデルを探してるんだけど、あなたやってくれないかな?」
「あー、いや、そーゆーのいいです」
「絶対、悪いようにしないし、今よりももっと格好良くなるよ?」
「急いでるんで」
「今日、時間ないなら明日でも」
「明日も時間ないっす」
「じゃ、いつならあるの?」
「ずっとない」
俺がそう言って再び歩き始めても女子大生はまだついて来ていた。
「一日くらいは時間あるでしょ?」
(しつこいなー)
ふと周りを見てみると俺以外にも何人かが同じ様に捕まっていた。
男子は女子大生に、女子もやはり大学生と思われる男に捕まっている。
どうも新手のキャッチセールスみたいだ。
“カットモデル”だとかなんとか言って店に連れ込んで適当にカットした後、
「お手入れにはコレがいいですよ」とか言ってやたら高いシャンプーとか売りつけるんだろうな。
そして駅の構内に入ろうとした時、小峯の姿が見えた――。
小峯は男二人に挟まれ、困った顔をしていた。
(あっちゃー……もしかして逃げられないのか?)
俺は後ろからついて来ながらまだ何か言っている女子大生を無視して小峯に近づいた。
「カットモデルくらいいいじゃん」
「絶対、今よりすんげぇ可愛くしてあげるからっ」
男二人は小峯を壁際にして逃がさないようにその前に立っている。
ゆるゆると断っているうちにジリジリと追い詰められたのか?
(つーか、さっき俺に絡んできた女子大生と同じ事言ってるし)
俺はどうにも逃げ場のなさそうな小峯を救出する為、男共の間を割って入った。
「お待たせーっ」
「……せ、先輩っ!?」
「ごめんな、待たせて。行こうか」
「えっ? えっ?」
小峯は唖然としていた。
「あれー? 何? 彼氏?」
「彼氏もカッコいいじゃん。 ねぇ、彼氏もカットモデルどぉ?」
俺が小峯の手を引いて立ち去ろうとしていると男共は俺の前を塞いだ。
「いえ、結構です」
「なんで? いいじゃん」
「そうそう、悪いようにはしないから」
(だから、バカの一つ覚えかって)